大林組らがICT建機で吹き付け作業を省力化する新工法を開発、工程を約25%短縮新工法

大林組と日特建設は、ICT建機で吹き付け作業を効率化する新工法を開発し、法面上での人力作業を大幅に減らして、従来の吹付枠工で生じていた課題を解消した。

» 2020年07月02日 09時00分 公開
[BUILT]

 大林組は、日特建設と共同で、法面に施工する吹付枠工で鉄筋と型枠を使用せずに、ICT建機で吹き付け作業を省力化する工法「ラクデショット」を開発した。

従来工法と比較して作業員を50%削減

 吹付枠工は、道路や鉄道などの建設に伴い形成された法面の安定性を確保するために、広く用いられている工法。法面上に連続した格子枠を設けることで安全性を高め、枠内に緑化を施すことで周辺環境との調和を図れ、防災と環境保全を目的に行われる。

従来工法 出典:大林組

 従来の吹付枠工では、法面上に鉄筋と型枠を組み立て、型枠内にモルタルを吹き付ける一連の作業を全て人力で行っていた。だが近年、法面上で作業できる熟練技能者の人材不足や材料運搬の負荷、昇降する際の転落/墜落のリスクが問題となっており、これまでのワークフローでは業務を円滑に進められなくなっていた。

 今回大林組が開発したラクデショットは、法面上での人力作業を大幅に減らすため、従来の吹付枠工で生じていた課題を解消する。

 ラクデショットでは、汎用の3Dマシンコントロールを搭載したバックホウ※1にノズルの往復移動を制御する自動スライドノズルを取り付けた建設機械で、モルタルを吹き付け、法面に一定の長さの枠を構築する。3Dマシンコントロールを備えたバックホウを用いることでオペレーターの熟練度によらない正確な操作が行える。また、法面とノズル先端の位置を常に一定の離隔に保った状態で、自動スライドノズルを法面と平行に移動させられるため、容易に均一な幅や長さ、厚さの吹付枠工を実現する。

※1 3Dマシンコントロールを搭載したバックホウ:GNSS(全地球測位衛星システム)からの情報を受信してアタッチメントの位置を取得し、施工箇所の3次元設計データと現況の3次元地形データを照らし合わせ、その差分に基づいてアタッチメントの位置や角度を自動制御できるバックホウ

ラクデショット 出典:大林組

 吹き付け材料には、スリムクリート※2を改良した高強度鋼繊維補強モルタルを使用するため鉄筋は必要無い。さらに、急硬剤を添加しながらモルタルを吹き付けるため、法面上でもモルタルが流れず、型枠なしで所定の厚さの枠を構築する。大林組では、従来工法と比較して強度にも優れていることを実験により確認している。

自動スライドノズル 出典:大林組

 新工法のコストは、従来工法と同等だが、法面上での鉄筋と型枠の組み立て作業が不要になるため、作業員を約50%減らせ、工程を約25%短縮する。法面上での作業が大幅に削減されるため、転落・墜落のリスクも低減可能。

 大林組は今後、ラクデショットを全国の道路や鉄道などの吹付枠工へ積極的に提案することで、技能者不足の解消や工期短縮、安全性の向上を図っていく。

※2 スリムクリート:大林組が開発した常温硬化型の高強度モルタルと高強度鋼繊維で構成されるコンクリート

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