鹿島建設とOKIは、オフィスビルで階段利用を促す専用アプリを用いた行動変容サービスの実証実験を行った。実験の結果、アプリ使用後に階段利用者が約40%増加するなど、効果が確認された。今後、新しいワークスタイルに順応した建物環境や働き方を支援するツールとして、スマートビルの提案に行動変容サービスを盛り込み、建物の付加価値向上につなげていく。
鹿島建設と沖電気工業(OKI)は、オフィスワーカーの健康意識向上を目的として、鹿島建設のオフィスビルで働くワーカーを対象に、スマートフォンアプリを使用して健康行動を促す行動変容サービスの実証実験を行った。
行動変容サービスは、適切なタイミングでメッセージを通知することで、ワーカーがエレベーター(EV)の利用を減らし、階段の利用を増やす健康行動を自発的に選択するよう促す。
経済産業省が健康行動を誘発する「健康経営オフィス」を推奨していることを受け、建物利用者のウエルネスに配慮した建物を評価する「WELL認証」が広がってる。SDGsやESGの観点からも、利用者の健康性や知的生産性に配慮するスマートビルに注目が集まっている。
鹿島建設では、緑などの自然要素を室内空間に取り込むバイオフィリックデザインや人流・環境情報データを収集しさまざまなサービスの提供につなげるスマートビルの開発を通じて、ウエルネス空間の提供に取り組んでいる。
一方でOKIは、生活習慣病の予防を目指し、行動科学や心理学と情報通信技術を組み合わせた「行動変容技術」の研究を通じ、独自の行動分析アルゴリズムを備えた行動変容エンジンを開発。行動変容エンジンは、個人の属性や日常生活で取得できる行動データとバイタルデータに専門家の知見を掛け合わせ、個々の特性に応じた健康行動を促すメッセージを出力する。
両社の技術を融合した行動変容サービスは、建物内の階段、通路、EVホールに設置したセンサーやカメラから、ワーカーの行動情報をクラウドに収集し、階段利用などの健康行動を誘発するメッセージをスマホに通知する。
スマホに内蔵している加速度センサーや気圧センサーからは、ワーカーの歩数や階段利用数などのアクティビティーを検知し、行動情報と連動することで、長時間のデスクワーク後に階段利用を促すなど、適切なタイミングで行動誘発メッセージを知らせる。
専用アプリには、ワーカーが階段を利用するモチベーションの向上をはじめ、継続した階段の利用につなげるための仕掛け(階段利用数・歩数情報の表示、利用数・歩数に応じたスタンプ付与による目標達成の見える化など)を実装している。また、EVに設置したカメラで混雑情報をクラウド上で把握し、状況に応じて階段利用を促すメッセージを専用アプリに発信することで、EVカゴ内の混雑回避にも役立てる。
実証実験は2021年3〜4月に鹿島建設のオフィスビルで行い、階段を利用するワーカーがサービス提供前と比べて約40%増加したという。さらに、継続的に階段を利用するモチベーションが上がったことを示す数値も高まり、健康行動の習慣化および動機づけに一定の効果があることが実証された。
今後は、個人の健康志向と行動促進の度合いなどに関するデータ分析を進め、サービス改良を図る。システム導入で、エレベーターの混雑解消に一定の効果が期待できるため、新型コロナウイルス感染症対策としても提案していく。
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