大成建設と国際医療研究センターは「集中治療室向け医療機器遠隔操作ロボット」を開発した。両社は、国際医療研究センターの病院で、非接触エリアから医療機器を遠隔操作し、集中治療室向け医療機器遠隔操作ロボットの操作状況や性能を検証した結果、医療従事者の感染リスクを減らせることが分かった。
大成建設と国際医療研究センター(NCGM)は、集中治療室で新型コロナウイルス感染症患者の治療に当たっている医療従事者の労働環境を改善するため、「集中治療室向け医療機器遠隔操作ロボット」を開発したことを2021年6月4日に発表した。
新型コロナウイルス感染症の重症患者が入院する集中治療室では、感染防止の観点から、医療従事者が機器を簡易操作するたびにガウンやマスクなどの防護服を装着して集中治療室へ入室する必要がある。例えば、医療従事者が点滴静脈注射による薬液投与の流量速度を機械的に調整するシリンジポンプを扱う場合、多くの簡易なボタン操作を行うたびに、防護服などを装着し入室しなければならず、防護服の着脱不備による感染リスクや防護服の使い捨てによるコストの増大が課題となっていた。
そこで、両社は、大成建設がこれまで工場などの生産施設向けに開発を進めてきた「力触覚伝達型遠隔操作システム」の技術を応用し、医療従事者が集中治療室に入室することなく、非接触エリアから医療機器を遠隔操作できる「集中治療室向け医療機器遠隔操作ロボット」を開発した。そして、集中治療室向け医療機器遠隔操作ロボットを使用し、最も頻繁に操作が求められる医療機器であるシリンジポンプを対象に、遠隔操作の実証と効果の検証を実施した結果、医療従事者の感染リスクを減らせることが分かった。
集中治療室向け医療機器遠隔操作ロボットは、シリンジポンプの操作ボタンやダイヤル近傍まで自動でアームを移動でき、専用のコントローラーでボタン・ダイヤルを遠隔操作することも可能なハイブリッド動作を実現した。
アーム移動の自動化は事前のティーチングで行う。ボタン・ダイヤル操作は、医療従事者が集中治療室で使用する機器の表示画面やロボットの様子を映像・音声で確認して状況を判断し、専用のコントローラーを利用して遠隔操作を実施する。
今回のロボットで遠隔操作を効率的に実施するため、ロボット制御機構を搭載した専用架台を活用し、中央に据えたロボット1台で最大6台(台座周囲3方向、上下2台)のシリンジポンプを使えるようにした。さらに、マイク付きWebカメラを専用架台の上方に3台設置し、映像と音声を使用してロボットの操縦者がロボットやシリンジポンプの動作状況を確かめられる。
また、シリンジポンプの「開始」「停止」「早送り」といった3種類のボタンを押す動作や薬液の流量速度を調整するダイヤルを回す動きをロボットアーム先端の丸棒状治具だけで行えるようにした。シリンジポンプのボタン操作中に何らかのエラーが生じ、機器に接触したままロボット動作が停止した際には、アーム先端に内蔵されているエアシリンダーの減圧により接触面の圧力を開放し、ボタン操作を中断して安全性を担保する。
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