2020年2月に竣工したJR和歌山駅前に建設中の複合再開発ビルの名称が「A TOWER」に決定、分譲マンションの引渡しを開始した。高さ81.29メートルの同ビルは和歌山市街地で最高層の建物となる。「医療・商業・住宅」が同居する再開発事業は全国的にも珍しい。
旭化成不動産レジデンスは2020年4月6日、同社が特定事業参加者として推進する「和歌山都市計画友田町四丁目地区第一種市街地再開発事業」が建設し、同年2月27日に竣工した高層ビルの名称を「A TOWER(エイタワー)」に決定したと発表した。高さ81.29メートルの同ビルは、和歌山市街地で最高層の建物となる。
A TOWERの7〜20階を占める分譲マンション「アトラスタワー和歌山」は2020年3月29日から引渡しが始まっており、同年5月上旬には医療法人博文会児玉病院が3〜6階に、同年6月には地元のスーパー「ゴトウ」が1階に、同年7月にはクリニックモールが2階に開業する予定。
A TOWERの特長は、和歌山市の少子高齢化を見据えて「医・食・住」を同居させた点にある。主要テナントは医療施設で、3〜6階に医療法人博文会児玉病院が地権者として入居するほか、2階には整形外科、乳線外科、小児科、眼科などで構成するクリニックモールが、1階には調剤薬局が開業する。
児玉病院は、一般入院病棟として44床、人工透析センターとして59床を確保しており、リハビリテーションや在宅医療にも対応するなど、高齢化する和歌山市街地住民の医療を幅広くカバーできる診療体制を整えている。同病院と和歌山市は、「一時滞在施設への帰宅困難者の受入に関する協定書」を締結する予定でおり、災害時の帰宅困難者の一時受け入れにも対応する施設としても活用が見込まれる。
医療施設のほかには、1階に食品スーパーとカフェが開業し、入居者や地域住民のデイリーユースに対応する。駐車場も入居者専用スペース以外に、来訪者が利用できる時間貸しスペースを設置するなど、駅前の賑わい創出に向けた工夫が盛り込まれている。
全96戸の分譲マンションは、通勤通学や医療住宅一体型住宅の利便性、地震発生時の津波の想定範囲外であることへの安心感などが決め手となり、ほぼ完売している。購入年齢層は20〜60代以上までと幅広い世代におよび、駅前の定住人口増加と賑わい創出に一定程度寄与したことがうかがえる。
A TOWERの概要は、地上20階建てで、構造は鉄筋コンクリート造(一部鉄骨造)。敷地面積は2881平方メートル、建築面積は2302平方メートル、延べ床面積は2万4366平方メートル。総事業費は約92億円(うち、国と和歌山県と和歌山市で約35億円を補助)。
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