高剛性の地中連続壁を簡単に作れる高性能継手工法を開発、清水建設施工

清水建設は、地震が発生した時、建物基礎に作用する鉛直力に対する構造耐力を備えた地中連続壁を簡単に作成する場所打ち地下構築工法「SSS-N工法」を開発した。新工法は、地中連続壁を構成する単位壁体(エレメント)を波形の鋼板を介して接合し、剛性の高い連続壁を構築する。剛結継手でエレメントを構造的に一体化させる従来工法と異なり、隣接エレメントの鉄筋かごを連結させる必要がないため、地中連続壁を効率的に作れる。

» 2021年07月09日 09時00分 公開
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 清水建設は、地中連続壁工法の生産性向上を目的に、地震が起きた時、建物基礎に作用する鉛直力に対する構造耐力を備えた地中連続壁を簡易に作れる場所打ち地下構築工法「SSS-N工法」を開発したことを2021年5月27日に発表した。

従来工法と比べ施工費用を約1割削減可能

 地中連続壁工法では、設定した幅ごとにRC造の壁体を継手部材で連結し、剛性の高い連続した地下壁体を構築する。そして、大都市中心部で計画される大型再開発や超高層建築プロジェクトでは、鉄道や道路などの重要インフラに近接して地下掘削を行うケースが多く、近隣への影響を抑制できる地下壁体として地中連続壁のニーズが増えている。

 また、地中連続壁の継手工法には、隣接する単位壁体(エレメント)の水平鉄筋を重ね継手により連結した後、コンクリートを打設してエレメントを一体化させる剛結継手が主に採用されている。しかし、重ね継手の施工は作業が煩雑となり、品質面でも配筋が密になるためコンクリートの充填性などに留意する必要がある。

 さらに、工程の都合上、重ね継手部は長時間に渡り泥水のみで溝壁を保持しなければならないため、溝壁の安定性にも課題があった。そこで、清水建設は、高い施工性と継手部の荷重伝達性を両立する高性能継手を用いて地中連続壁を作るSSS-N工法を開発した。

 SSS-N工法に使用する継手部材は、薄い波形鋼板、その両側に配置した側板とスペーサー、硬質ゴム製のコンクリート漏れ防止シート、洗浄機用T型ガイドなどで構成される。継手部の施工は、先行エレメントの掘削後、端部に仮設の保護ボックスを挿入し、その内側に継手部材を建て込むのみ。

「SSS-N工法」の施工手順 出典:清水建設

 保護ボックスは、先行エレメントのコンクリート側圧を地盤に負担させるとともに、後行エレメントの掘削時に継手面を保護する役割を担う。継手部材の建て込み後、鉄筋かごを挿入し、コンクリートを打設すれば、先行エレメントの構築が完了する。続いて、後行エレメントの施工では、掘削、保護ボックスの引き抜き、継手面の洗浄、鉄筋かごの建て込み、コンクリートの打設を順に行う。

 新工法の継手部は、両エレメントのコンクリート面が波形鋼板を介して相互にかみ合うシアキー形状を形成するため、建物基礎に作用する鉛直力をエレメント間で確実に伝達し、地中連続壁全体を荷重支持部材として使える。施工面では、継手部材の施工手間と部材量を従来工法と比べて削減し、施工費用を約1割減らせる。清水建設は、新工法の有用性について日本建築センターで評定を既に取得している。

従来工法の剛結継手(左)とSSS-N工法のシアキー形継手(右)の比較 出典:清水建設
シアキー形継手部材(左)とシアキー形継手部の断面(右) 出典:清水建設

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