新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、一気に進展したここ最近の働き方改革では、各社ともに、在宅勤務やテレワークの導入だけに注目されることが多い。しかし、その先のafterコロナ後の世界では、ワークプレースを柔軟に選択できる“ハイブリッドワーク”が基軸の考えとなり、実現に向けた業務の効率化や自動化といったデジタル変革は、建築やエンジニアリングの分野でも、避けては通れないものになるだろう。オートデスク主催のセミナーから、IDC Japanによるハイブリッドワークの潮流や日揮ホールディングスの工期2分の1を掲げた全社IT推進、東芝エレベータの維持管理段階も含めたBIM活用などの実例から、如何にしてafterコロナの市場を生き抜くか、ヒントを探った。
オートデスクは2021年5月26日、製造業/建設業のエグゼクティブ向けオンラインセミナー「アフターコロナに勝ち残る!未来の働き方とは」を開催した。afterコロナ後に、日本企業が直面する未来の働き方の一端を示したセミナーでは、IDC Japan 市川和子氏、日揮ホールディングス Chief Digital Officer(CDO) 花田琢也氏、東芝エレベーター EaaS推進プロジェクトマネジャー 古川智昭氏の3者が登壇した。
IDC Japan PC・携帯端末&クライアントソリューショングループ マネジャー市川和子氏は、「働き方の未来:ハイブリッドワークの実現とその先に向かって」と題し、2020年に起きた働き方の地殻変動により、在宅勤務がコミュニケーションや作業のデジタル化を加速させたこと、グローバル企業の主要な潮流「在宅勤務からハイブリッドワーク」、働く場や新型コロナワクチン普及後の働き方に関するデータを解説。こうした昨今の働き方に関するトレンドを踏まえ、IDC Japanとして「働き方の未来(Future of Workstyle)」のフレームワークと、働き方の未来のためのIT投資の重要性などを提言した。ここからは、市川氏のプレゼンテーションの概要を解説していく。
2020年は、新型コロナウイルス感染症の拡大によって、在宅勤務やテレワークが急速に広まった。これらが主要因となって、コミュニケーションや業務のデジタル化も加速し、企業の制度や文化に、多大な変化がもたらされた。2020年はいうなれば、“働き方改革の地殻変動の年”と位置付けられるだろう。
では、2021年はどうなるのか?GAFAに代表されるITのリーディングカンパニーは、新型コロナウイルスのワクチンがある程度普及した段階で、在宅勤務から「ハイブリッドワーク」への移行を表明している。ハイブリッドワークとは、オフィスを中心とした働き方をしながら、家庭も含めたオフィス以外の働く場所に関して、ライフスタイル、ライフステージに沿って従業員自身が選択できるワークモデルを指す。
トヨタ自動車など製造業のリーディングカンパニーでは、在宅勤務を制度として正式に取り入れ、工場勤務の従業員も含めた柔軟な働き方の模索を既に始めている。銀行やコンサルティング業界では、ワーケーションの導入やキオスク型のテレビ窓口を設置し、在宅勤務のテラーが新規口座開設や投資相談に応じるサービスを開始。多くの先進企業は、afterコロナを見据え、ITを徹底的に活用することで、生産性の高い安全な働き方、対面の良さも併せ持ったワークモデルの構築に向けて動き出している。
IDC Japanの「2021年働き方の未来に関する国内企業ユーザー動向調査」によると、2021年3月に国内で6割の企業が「主に自宅またはその他のリモートで働く」と回答。政策の後押しもあり、在宅勤務がかなり普及していることが分かった。
一方、ワクチン普及後の予測では、「主にオフィス(本社、支店、サテライトオフィスなど)で働く」と回答した企業が8割を超えており、ワクチンが行きわたった後のトレンドは、オフィス回帰=“バックトゥオフィス”の流れが予測される。
ワクチンを接種した後、自宅とオフィスで従業員が週に何日勤務すると予想するかという質問に対しては、自宅が隔週以上で3割であるのに対し、オフィスは週に5日、ほぼ毎日オフィスで働くという回答が6割以上となった。ワクチン普及後は、オフィスが主体となる一方で、ある程度定期的に自宅やその他のリモートで働くことを選択するハイブリッドワークが出てくる可能性が高い。
日米のデータを比較すると、両国ともこのようなハイブリッドワークが定着する傾向がみられ、ワクチンが行き渡れば、ハイブリッドワークが働き方の新たな潮流になるとみて間違いないだろう。
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