パナソニック ライフソリューションズ社は、Revitのアドオンとして独自に開発したBIM用リアルタイム照明シミュレーションツール「Lightning Flow(ライトニングフロー)」を無償で公開している。既に長谷工コーポレーションでも採用されており、次のバージョンアップでは、同社の照明器具ファミリを2万点までカバーする以外に、照明設計ソフトウェアともRevitを介して連携。単なるデザイン検討だけにとどまらない、照度を数値化するなど設備設計者の要望に応える本格的な照明設計が可能になる。
パナソニック ライフソリューションズ社は、BIMモデル上で照明のシミュレーションを高速に処理する無料ソフトウェア「Lightning Flow(ライトニングフロー)」を2021年6月21日にアップデートする。
ライトニングフローは、照明器具を3Dデータ上の任意の位置に配置し、照明器具の明るさや反射、太陽光の影響などを瞬時に確認しながら調整できるシミュレーションソフト。2021年3月31日より先行して、公式HP上で試験的に公開しており、新バージョンでは、商品器具データを2万点にまで拡充し、照明器具を効率的に配置できるソフトウェア「ルミナスプランナー」とも連携する。
先立つこと2021年5月31日には、オンラインで記者発表会を開催し、ライトニングフローの開発責任者でライティング事業部 エンジニアリングセンター 主幹 高島深志氏が他の照明シミュレーションツールとどう違うのか、既に導入している長谷工コーポレーションの事例にも触れつつ紹介した。
2002年にパナソニック入社後、2013年以降は照明シミュレーションを軸とした高速グラフィックエンジンの開発を担当している高島氏は、ライトニングフロー開発の理由について、「BIMは日々進化しており、昨今では3Dデータ内を移動しながら各所を確認するビジュアライゼーションや目に見えない気流のシミュレーションなど、用途の幅が広がりつつある。その中で、BIMモデル上で空間に適した光環境(必要な明るさ、照明の性能、必要台数、配置位置など)を設計する3次元の照明設計に対する要望も高まっている。だが、照明設計には、設計した建築空間の光環境を確認するための照明シミュレーションは欠かせない」と話す。
一般的に照明シミュレーションは、配置された光源と周囲の物体が反射特性などで複雑に影響し合うため、正確な見え方の再現が難しいとされている。同時に、照明を配置するたびに膨大なデータの処理に時間がかかる上、イメージが合致するまで繰り返さねばならず、効率的に照明プランを検討する手段がないのが現状だ。
例えば、既存の照明シミュレーションソフトでは、設計段階のBIMモデルからシミュレーションに使用するデータの書き出しができなかったり、長時間を要した照明計算で検討しても、BIMモデル側に修正を反映できなかったりすることが少なくない。そのため、データ変換の煩(わずら)わしさに加えて、シミュレーションソフトで検討した照明器具の選定や配置などをBIMモデルで再度やり直さなくてはならないというわけだ。
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