小規模を除く全公共工事でのBIM/CIM原則適用へ向け、ここ数年、運用対象が拡大している。しかし、土木の設計業務へのCIMの普及・定着は遅れ気味で、その促進には実現場でのBIM/CIM導入効果の実証が必要だ。日本工営では、足羽川ダム建設プロジェクトで設計業務の分析を行い、CIMで効率化可能な部分を抽出。実際にCIMを用いて効率化を進めている。オートデスク主催のオンラインイベント「Autodesk University 2020」で、同社の山田憲治氏が行った発表から、取り組みの内容を紹介する。
「現在、私は日本工営のCIM推進センターで、新入社員研修とともに業務の効率化方法の検討を行っています。当然、現場のCIM導入バックアップも重要な仕事の一つとなります。ところが、私が異動してきた当時“CIMなんて3次元モデルを作成する手間がかかるだけ”というのが、設計者たちの一般的な認識でした」。本セミナーのスピーカーである山田憲治氏はそんな言葉で語り始めた。
山田氏によると、CIM推進センター着任当初、元の所属部署だった設計部門にCIM活用について声をかけてもなかなか相手にされなかったと口にする。設計者たちの「3次元なんて手間がかかるだけ」という先入観を打ち破るには、CIMで「実際に効率化を行う」事例を見せるしかなかったのである。
「もともとダム分野は新しい技術を取り入れやすい土壌があり、本当に効率化を実現できるなら設計段階で導入可能──という雰囲気がありました」。実案件のダム設計でCIMを導入した理由について、山田氏はそう語る。ダム事業分野そのものは、新規プロジェクトが見込みにくい現状にあり、若い設計者の育成は難しく熟練技術者の高齢化も進んでいる。そのため、ダム設計の経験が少ない技術者でも対応できる設計スタイルが強く求められている。3次元モデルから平面図を作成するBIM/CIMの活用がクローズアップされているのはそのためだ。さらに近年の働き方改革の流れも後押しして、「多量の労働力を求めるダム設計は効率化必須」となっている。
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