熊谷組が床スラブで鉄骨梁の横座屈補剛を行う工法を開発施工

熊谷組は、床スラブを活用し、鉄骨梁上フランジの水平変位と回転を制御して、横座屈補剛を行う「熊谷組鉄骨梁横座屈補剛工法」を開発した。新工法は、2020年3月に日本ERIの構造性能評価を取得しており、既に、神奈川県川崎市の物流施設「ESR川崎夜光ディストリビューションセンター」や大阪市福島区の「レンゴー淀川工場跡地開発計画」の新築工事で適用されている。

» 2021年04月07日 09時00分 公開
[BUILT]

 熊谷組は、床スラブ付き鉄骨梁(はり)を対象に、床スラブによるH形鋼梁上フランジの水平変位と回転抑制効果を利用して鉄骨梁の横座屈補剛を行う「熊谷組鉄骨梁横座屈補剛工法」を開発したことを2021年1月29日に発表した。

シアコネクターを用いて鉄骨梁と床スラブを一体化

 S造建築物に使用されているH形断面梁は、大きな荷重が作用したとき、水平方向(横方向)に広がる横座屈現象が生じることがある。防止策として、H形鋼などによる横座屈補剛材を小梁や方杖(ほうづえ)としてH形断面梁に設置することが、建築基準法で規定されている。

 一方、大梁の上フランジは、床スラブなどにより、連続的もしくは断続的な伸縮の抑制を受けていることが多く、この抑える力で、横座屈を防げることは、既往の研究や実験により広く知られている。

 そこで、熊谷組は、床スラブの横座屈補剛効果を利用し、設計と施工を合理化する熊谷組鉄骨梁横座屈補剛工法を開発した。

熊谷組鉄骨梁横座屈補剛工法の適用イメージ 出典:熊谷組

 熊谷組の鉄骨梁横座屈補剛工法は、頭付きスタッドなどの2つの部材をつなぐ接合部材「シアコネクター」を用いて鉄骨梁と床スラブを一体化することで、床スラブにより、鉄骨梁上フランジの水平変位と回転を制御する横座屈補剛を行う。そうすることで、大きな荷重がかかっても、鉄骨梁は横座屈せず、全塑性モーメントに達し、塑性化後の早期耐力劣化を防げる。全塑性モーメントとは部材の全断面が降伏状態になったもので、モーメントとは塑性断面と降伏応力度をかけたもので、塑性とは、物体が負荷を受けて変形し、その力を取り除いても元の形に戻らず変状が残る現象。

 新工法で設計された鉄骨梁は、梁端部が全塑性モーメントに達するまで横座屈が発生せず、かつ保有耐力横補剛を満たした梁部材として扱える。また、H形鋼の大梁であれば、素材は高炉材や電炉材に対応する工法となっている。高炉材とは、鉄鉱石を溶かし銑鉄を製造する高炉や銑鉄から鋼を抽出する転炉、鋼を圧延する圧延機を活用し作られた部材で、一方の電炉は電炉で鉄クズを溶かして鋼を生産し、圧延機で形が整えられた部材。

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