岐阜大学らの研究グループは、乾式と湿式の吹付け技術をハイブリッドさせ、これに加えてICT建機と3Dプリント技術の融合で、土木構造物を現場で立体造形する新技術を開発した。
岐阜大学、施工技術総合研究所、住友大阪セメント、清水建設、NIPPO、丸栄コンクリート工業、エフティーエスなどをメンバーとする研究開発グループは、建設分野で既に構築されている「乾式吹付け」と「湿式吹付け」の両方のメリットを兼ね備えたハイブリッド吹付けシステムを実用化し、これにICT建機と3Dプリンティング技術も組み合せ、現場で構造物を直接プリント造形する「On-Site Shot Printer」を開発した。
コンクリート分野では、国土交通省が旗振り役となって進める“i-Construction”の3本柱の一つとして、工場製品によるプレキャスト化が推奨されている。しかし、この領域では、他分野の生産性向上に比べ、研究開発の余地が多く残されている。そこで研究開発グループは、「社会が求めているインフラにおける生産性向上技術とは、現場打設から工場製品に移行するだけではなく、全く新しい発想によるコンクリート構造物の製造技術の開発」と捉え直し、3Dプリンティング技術に着目した。
現場での直接プリント造形は、造形するための材料の長距離搬送が必要となると同時に、造形物の強度確保も欠かせない。そのため、前者に対しては、材料を個別に搬送して先端のノズルで混合吹付けする「乾式吹付け技術」、後者に対しては、あらかじめ混合した材料を先端ノズルから吹付けする「湿式吹付け技術」が有効とされているため、両技術のメリットを兼ね備えたハイブリッド吹付けシステムを開発した。
現場での3D造形は、最初にICT建機のバケット先端に吹付ノズルを取り付け、無限の平面設計データを作成・入力し、水平軸を制御して行う。高さについては、オフセット機能(スイッチにより設定した高さ分を上げ下げ可能な機能)で調整。こうしたICT建機技術を用いることで、施工技術総合研究所の実験では、高さ1.5メートルの型枠(柱)や高さ1メートルの壁を想定したコンクリート構造物を直接3D出力することに成功したという。
開発のロードマップでは、現段階のフェーズ1でコンクリート構造物の型枠など、とくに材料の運搬が困難な場所で施工する埋設型枠としての利用を想定している。続くフェーズ2では、施工精度や施工管理システムを構築した後、橋台、橋脚、ケーソンなど、下部工の大型部材に適用する。最終のフェーズ3では、床版や壁高欄など橋梁(きょうりょう)上部工や付帯構造物などに導入することを見込む。
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