シングル向き物件の主な借り手である学生は、授業がオンライン中心になったことで大学の近くで一人暮らしをする必要がなくなり、実家に戻る動きも見られました。また、企業の転勤も減っているため、単身赴任など社会人の一人暮らしも少なくなりました。シングル向き物件の募集家賃の下落は、こうした背景による需要減も影響したと考えられます。
一方、ファミリー向き物件の家賃水準が高くなっているのは、コロナによりおうち時間が長くなったことで、テレワークや趣味のスペースを確保したい人が広い物件に住み替えていることも一因です。
では、気になる今後の家賃はどうなっていくでしょう。不動産会社の方々に聞いてみたところ、「変わらない」「下がる」といった慎重な見通しが大半で、需要や借り手の支払い能力の低下を要因とする声が目立ちました(図表3)。
コロナを機に進んだのは、借り手のニーズの「多様化」です。家賃負担を抑えるため安い物件を選ぶ人もいれば、住環境の充実のためハイグレードな物件を選ぶ層もいます。
また、テレワークの浸透で郊外の物件が注目される一方で、通勤時間を短くするため都心に住み替える動きも少なくありません。
2021年も、こうしたニーズの多様化はより加速すると予想されます。この連載では、これからも不動産市場のさまざまな変化について定期的に解説していきますのでご期待ください。
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