東急住宅リースと三井不動産は、不動産マッチアプリや業務支援系ソフトなどの不動産テックを開発するITベンダーとの業務連携や共同開発などの共創を推進している。今後さらに、その勢いを加速していく方針だ。
朝日インタラクティブは2019年8月28日、東京都千代田区の御茶ノ水ソラシティカンファレンスセンターで、セミナー「CNET Japan Conference 不動産テックカンファレンス2019 不動産業界の未来を輝かせる『テクノロジー・ビジネス・人材』の活かし方」をリブセンスと共催した。
今回、モデレータをリブセンス 執行役員の芳賀一生氏が担当し、ゲストスピーカーとして、東急住宅リース 事業戦略本部 取締役執行役員 事業戦略本部長の佐瀬篤史氏と、三井不動産 経営企画部 ビジネスイノベーション推進グループ長の須永尚氏が登壇したパネルディスカッション「大企業×スタートアップ、共創に必要なコト、モノ、心構え〜東急住宅リースと三井不動産に聞く〜」を紹介する。
パネルディスカッションでは、それぞれの会社紹介の後、両社よりスタートアップとの共創に向けた取り組みや事例、スタートアップと不動産会社の考え方の違いについて説明した。
三井不動産は2015年度に、創造的なコミュニティーの形成や資金面におけるスピーディーなサポート、同社の有するアセット・リソースと支援の提供を掲げ、ベンチャー共創事業部を設立した。また、2018年度にはビジネスイノベーショングループを設け、不動産業でのIT活用を意味するリアルエステートテックの強化やスタートアップとの協業による価値創造、PoCの実施から本格展開への迅速な展開を目指した。
両セクションを総称して、ITイノベーション部と呼称し、顧客視点でのサービス向上を実現する既存事業のテック化と新事業の創出を狙っている。
須永氏は、「ITリテラシーの低い不動産業界にITを導入することで、ホスピタリティや快適性などの質が上がり、顧客の満足度を高められると考えている。また、新規領域の開拓に役立つと想定しているが、まだ試行錯誤の段階だ」と語った。
具体的なIT企業との共創事例として、フィンランドのMaaS Global(MG)との例を挙げた。MGは、鉄道、バス、タクシーなどの多様な交通手段を組み合わせたルートの検索や予約、発券、決済を可能とするMaaS事業をスマートフォン用アプリ「Whim」を通じて世界で初めて実用化した企業。
三井不動産は2018年9月にMGを訪問し、翌2019年1月にMGが三井不動産の本社を訪れ、日本でのMaaSの実証実験について意見交換した。同年3月6日に三井不動産がMGに出資し、同年3月15日に、三井不動産がMGに赴き、実証実験の実施について合意を得た。同年度下期に国内での実証実験の開始を予定しているという。
不動産分野でのMaaSの導入について、「さまざまな交通手段を定額で乗れるサービスと賃貸住宅をパッケージングすることで、ユーザーに新たな感動体験を提供できる。また、エリア内の不動産コンテンツの連携強化や地域・都市全体の付加価値の底上げと集客力向上につなげていける。現在、交通機関は各自でオペレーションされているが、そういった運行状況を街の多様な施設の営業状況とひも付け、効率的なモビリティサービスを行えれば利便性を高められる。行政とも話し合いを進め、三井不動産グループで街づくりの一環として、MaaSを導入していきたい」とビジョンを明かした。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.