戸田建設は、日酸TANAKAと岡谷酸素と共同で、RC造やSRC造、CFT造などのコンクリート構造物を無振動で切断する「マスカット工法」を開発した。戸田建設は、東京中央区で施工中の新TODAビル計画に伴う解体工事に新工法を適用している。
戸田建設は、同社のHPで、日酸TANAKAと岡谷酸素とともに、水素系混合ガス「サンカッターHL-T」を用いたマスコンクリートなどの切断工法「マスカット工法」を開発したことを2020年10月13日に発表した。
近年、新たな建物を建設する前に、既存構造物を除去する解体工事が必要なケースが増えている。既存構造物の中でも、RC造のような堅牢な躯体の解体工事では、大型のブレーカーを用いる工法が一般的だが、作業に伴う工事振動の対策が求められている。
現在、断面の大きなコンクリート構造体の解体時に発生する振動を抑制するための工法としては、ワイヤソーイングやコアボーリングによる切断工法があるが、ワイヤソーイング工法はワイヤソーを切断部位外周に設置する手間があり、コアボーリングは構造体を構成する棒鋼や鉄骨などの鋼材がコアボーリングの障害となり、容易に使えなかった。
そこで戸田建設らは、地下のコンクリート構造物における解体の効率化や周辺環境に及ぼす影響の低減を目的に、マスカット工法を開発した。マスカット工法は、水素系混合ガスと酸素を特殊な金属粉と混合し燃焼させることで、コンクリートを融解させて構造物を切断する技術。
燃焼補助材として特殊な金属粉を用いることで、高い切断能力を実現し、RC部材を構成するコンクリートと鋼材の同時切断が可能で、無振動でコンクリートなどをカットできる。ワイヤソーイングによる切断工法では難しい地下外壁なども片側から切れるため、狭い空間での作業でも使え、従来工法よりも適用の幅が広い。マスコンクリートを小さく分断する利点を生かし、小型重機により狭いスペースで業務が行える。
新工法により主筋をガス切断した後に重機で破砕した場合、従来と比べて約40%の時間短縮を実現し、CFT構造物の切断時間は、ワイヤソーイング工法と比べて、約20%短い。現在は、厚さ1メートルまでのコンクリートを切れることが判明している。
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