竹中工務店は、虫の混入事故を防ぐため、食品や医薬品の製造工場向けに、紫外線LEDを採用した吸引捕虫機を実用化した。今後は、オフィスビルや店舗などにも、新たな建築ソリューションの一つとして、提案していくとしている。
竹中工務店は2020年10月5日、食品や医薬品の製造施設など、害虫管理が求められる建物を対象に、LEDを採用した飛来虫の吸引捕虫機「バグキーパーLED」を開発したと公表した。バグキーパーLEDは、製造・販売を日本エアーテックが担当し、2021年5月から販売を開始する。
バグキーパーLEDは、飛来虫を紫外線光源で誘引し、ファンの吸引によって捕獲する吸引捕虫機。竹中工務店では、飛来虫の吸引捕虫機として、虫を誘引する光源に蛍光管を使用する「バグキーパー」を2010年6月に発売しているが、今回開発した当捕虫機にはLEDを採用した。
LEDの長所となる狭小かつ虫を誘引しやすい波長の紫外線を放出することで、現行機と比較して、捕虫量が約57%増加することが既に性能確認実験で確認されている。同時に、虫の誘引に不要な光を放射しないため、エネルギー消費の低減につながり、39ワットの現行機に比べると、35ワットの本機は約10%削減できるという。
また、反射板などの蛍光灯に付随する部品が無くなり、約2分の1の省スペース化となり、壁掛けなど設置方法のバリエーションも広がった。移動用のキャスター架台を除いた本体サイズは、20(幅)×181(高さ)×10(奥行き)センチ。
さらに、露出部品が少なくなったことで意匠性も向上し、食品や医薬品の製造施設だけでなく、これまで設置の難しかった店舗やオフィスビル、美術館、博物館への展開も期待される。
バグキーパーLEDの開発理由について、竹中工務店では、建物内で起きる昆虫の異物混入などは、原因の多くが搬出入口などの建物開口部からの侵入によるもので、開口部の防虫対策は、虫害抑制では最も有効なためとしている。
また、これまで紫外線に虫が集まる習性を利用した“ライトトラップ”と呼ばれる防虫器具は、誘引光源に蛍光管が用いられていたが、LEDの普及が進み、紫外線蛍光管が製造中止となる可能性が高まっており、代替光源が求められていることも要因の一つとなった。
一方で、紫外線LEDは、早くからライトトラップ用の光源として期待されていたが、LEDの基材が自身の紫外線放射で劣化しやすかったり、砲弾型と呼ばれる放射角度が狭い製品が主流だったりしたことで、ライトトラップへの適用は進んでいなかった。
バグキーパーLEDの製品化により、昆虫異物混入で最も重要な飛来虫への対策がさらに強化されたことに伴い、竹中工務店では、独自のエンジニアリング技術を適切に組み合わせ、施設の抱える課題に対して、建築的アプローチから解決策を提供していくとしている。
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