竹中工務店は、風が建物に与える影響を高精度に予測する数値シミュレーションの数値風洞「Kazamidori」を開発した。Kazamidoriは、風の強さや流れをコンピュータ上で計測し、風荷重(建物が風から受ける力)や風速を評価することで、建築と屋外の風に関する諸問題を解決する。
竹中工務店は2020年9月4日、スーパー台風などの風が建物に与える影響をシミュレーションで予測して、風向きや風力をアニメーションで可視化する数値風洞「Kazamidori」を開発したと公表した。
Kazamidoriの開発理由について竹中工務店は、近年、勢力を増す台風に耐える強い建物を造るには、風荷重を評価し、建物の形状や窓ガラスの面積・厚さ、外装材の種類などに反映させる必要があると説明する。これまでは、精度良く建物の風荷重を評価するために、評価する建物とその周辺市街地の模型を作って、風を当てて測定する風洞実験が行われてきたが、この手法では、模型製作に費用と期間が必要なことから、大規模なプロジェクトに適用が限られていた。
その点、Kazamidoriはコンピュータ上で市街地を再現することにより、模型製作に必要な費用と期間が削減できるため、中小プロジェクトや設計の初期段階で適用することが容易になった。
また、従来ビル風の評価で使用してきた数値シミュレーションは、平均的な風の流れを短時間で計算するため、建物の風荷重評価に必要な最も強い風の力を計算することはできなかった。Kazamidoriは、常に変化する風の流れを計算することで、大きく変化する風の力を数値シミュ―ションで算出できるようになった。
さらに、気圧配置などの気象条件を活用した気象解析の結果と連携しているため、特定の台風が上陸した際には、市街地内の気象条件を再現する。加えて過去の台風だけではなく、米合同台風警報センターが1分平均の最大地上風速で階級分けしている最大強度階級の「スーパー台風」も想定可能なため、台風被害リスクの評価に幅広く活用することができるとしている。
評価項目は、風荷重の他、風揺れによる居住性能、風による不安定振動の有無、建物周りの最大風速。複雑な形状の建物や細かな部材に作用する風の力についての詳細な計算結果が得られるだけでなく、街区など広い範囲を対象に、実際には見ることができない風の流れや建物表面の風圧をコンター図やベクトル図、流線図などのアニメーションで可視化する。
竹中工務店は、Kazamidoriを設計初期から活用することで、強風に対する安心・安全と経済的合理性が両立した建物を提供していくとともに、独自のAI技術も採り入れて強風災害の迅速な予測技術の実現を目指す。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.