既製コンクリート杭の支持層到達をWebで確認する「杭番人」製品動向

大林組は、既製コンクリート杭の支持層への到達を遠隔地からもWeb上で調べられるシステム「杭番人」を開発した。杭番人は、元請技術者や杭工事管理者が、杭の支持層への到達確認を容易に確かめられる環境を提供できる他、従来難しかった判定の根拠となるデータの保存に応じている。

» 2020年08月12日 09時00分 公開
[BUILT]

 大林組は、既製コンクリート杭のプレボーリング根固め工法を用いた工事で、杭の支持層への到達を遠隔地からもWeb上で調べられるシステム「杭番人」を開発した。

判定の根拠となるデータの保存が可能

 既製コンクリート杭のプレボーリング根固め工法は、杭打ち機に搭載されたオーガー(掘削用のスクリュー)で地盤を掘削し、工場で製作されたコンクリート製の杭を挿入して地盤に定着させる。杭を地盤に固定するには、杭の先端が支持層と呼ばれる硬い地盤に到達していることが不可欠で、施工者は工事中に杭の先端が支持層に及んだかを確認することが義務付けられている。

 杭の支持層への到達を直接目視で把握することは困難なため、杭工事管理者(杭メーカー)は、オーガーを回転させるモーターの電流値や掘削にかかる時間が、地盤の硬さによって変化することを利用して、支持層到達を判定する。

 硬い地盤の掘削時には、杭打機にかかる負荷が大きくなることで、杭打ち機本体が振動するといった現象も、杭が支持層に到達したかの判断に使用する。杭工事管理者が杭の支持層への到達を判定する際には、元請技術者も現場に立ち会って確かめる。

 また、これまでプレボーリング根固め工法を使った工事では、杭打ち機の振動やモーター音が大きくなるといった施工状況の変化を保存することも難しく課題となっていた。

「杭番人」のイメージ 出典:大林組

 これまでと比較して、各ステークホルダーが、杭の支持層への到達確認を容易にし、施工状況変化の保存に対応したのが杭番人。杭番人は、掘削時における電流値などの各種指標をWeb上でリアルタイムに表示し、杭の支持層到達を見える化する。

 元請技術者は、離れた場所からでもPCやモバイル機器を使用して、杭の支持層への到達を把握可能なため、地盤の状況や杭の本数により差はあるが、従来と比べて最大で約50%作業時間が低減する。

杭番人を用いた杭打ち機の振動の図化イメージ 出典:大林組

 システムは、Web上で、大林組が独自開発した「杭打ち機の振動を定量化した振動指標」を含む合計13種類の指標を映し出す。

 13種の指標により、現場の地盤状況に応じた複合的な判定が簡単になり、ユーザーは杭の支持層到達を判断しやすくなる。また、異常値を検出するアラーム機能を備えており、入力間違いなどのミスを減らせる。

 施工状況変化の保存方法は、杭打ち機の振動を計測し、周波数別に分析して、定量化した振動の変化を震えの大きさごとに色分けして表示し、判定の根拠となるデータを残す。

 今後、杭番人を既製コンクリート杭の施工現場に幅広く導入し、支持層判定の精度を高めるとともに、管理業務の効率化を進めていく。

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