ネットワーク不要で構造物の異常を検知する新システム、三井住友建設製品動向

三井住友建設は、ネットワークの無い環境下で、構造物のわずかな変化をリアルタイムに計測する「即時異常検知システム」を開発した。

» 2020年08月04日 09時00分 公開
[BUILT]

 三井住友建設は、兵庫県三木市にある破壊実験施設「E-ディフェンス」で、ワイヤレス振動センサーを用いた「即時異常検知システム」をRC造3階建ての建物に設置。無線ネットワークの環境下で、構造物のわずかな変化をリアルタイムに検知することを確認した。

構造物固有の特性値で生じる変化を自動で評価

加振実験の様子(左)とワイヤレス振動センサノード(右) 出典:三井住友建設

 即時異常検知システムは、東京大学 生産技術研究所 水谷司准教授と共同開発した異常判定手法を、無線ネットワークの環境下に置いたもの。計測やデータ通信、センサーノードで活用するエッジコンピューティングの実装は、IoTシステムメーカーのソナスと共同開発した。

 システムの特徴は、測定値の統計的な情報を随時学習し、日常的なごくわずかな振動「常時微動」から、構造物固有の特性値で生じる変化を自動で判別する点。また、構造物の特性値を事前に知る必要が無く、汎用性の高い異常判定手法のため、スピーディーなモニタリング環境の整備が期待できる。

 具体的には、センサー内に搭載したCPU(中央処理装置)で数値計算を行うため、評価に必要な情報を迅速に収集し、構造物の異常をリアルタイムに検知する。

 システム開発の背景には、大地震発生後、すぐに建物や構造物が使えるかの判断を迅速に進めたいというニーズがあった。そこで三井住友建設は2014年、長大橋梁(きょうりょう)で無線ネットワークにより広範囲を一括して監視する「橋梁地震時モニタリングシステム」を開発して現場に適用した。

 以降、長崎県の軍艦島で、老朽化が進む建築物への試験導入や遠隔地からの常時モニタリングを実現するなど、複数の橋梁や建築物でその性能を証明してきた。

 今後、三井住友建設では即時異常検知システムを実構造物へ適用するとともに、モニタリング技術の開発に注力していく。

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