【第10回】スマートビルの“セキュリティ監視”が運用改善にも役立つ理由「サイバー・フィジカル・セキュリティ対策ガイドライン」詳説(10)(2/2 ページ)

» 2020年07月29日 10時00分 公開
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2.制御系のネットワークセキュリティ監視が運用改善にも役立つ理由とは?

 海外テーマパーク導入事例の興味深い点は、実はソリューション導入後の運用担当者の認識変化にある。テーマパークの担当者は、制御系ネットワーク監視の異常検知の機能が、サイバー攻撃の検知だけではなく、ビルシステムやアトラクション関連などのさまざまな装置の異常やネットワークの健全性など監視するのに役に立つことに気づいたそうだ。結局、このテーマパークでは、導入した装置を、もはやセキュリティ監視のためというよりも、運用改善のためのネットワーク可視化装置として高く評価して運用しているそうである。

 このテーマパークの実例ではないが※3、セキュリティ監視画面で、装置の異常がどのように見えるのかをイメージするためのサンプルの検知例を示す(図2)。この例は、ビルの会議室のファンコイルが故障しかかっていて、時々フラッピングと呼ばれる不安定な動作を異常として検知しているケースである。時折、グラフがスパイクしているのが見ていただけるだろう。このような現象を見つけたら故障する前に、取り換えるといった施設管理の運用改善につなげられる。

※3 テーマパークの実例はセキュリティ上の理由で公開できないため

図2:ビル会議室のファンコイルのフラッピング事象の検知例 提供:テリロジー

 また、制御系のネットワークで、ローカルIPアドレスが固定で振られている場合、ネットワーク上のある装置を交換したときに、IPアドレスの付け間違えをした結果、アドレスが既存装置と重複することで、通信異常が発生した経験はないだろうか。交換作業をメンテナンス業者任せにしていれば、原因が分からず復旧に時間がかかってしまうこともある。このような通信異常もサイバー攻撃ではないが、異常検知の機能を用いることで早期検知が実現する。

 このような機能は、実は現場の運用担当者にとっては大変ありがたい。セキュリティ製品の導入というと、「このビルがサイバー攻撃なんて受けるわけない」といった現場からの反発もあるだろうが、「運用改善のためのネットワーク可視化ツール」という説明をすれば、導入のハードルは下がるだろう。

 今回は、海外のテーマパークでのセキュリティ対策事例として、産業系ネットワークセキュリティ監視装置の導入事例について紹介した。

■まとめ

 ■海外テーマパーク施設の事例にみる、セキュリティ監視ソリューションの特徴とは?

「ミラーポート利用によってシステムへの影響を最小限とする」「制御系の資産可視化・脆弱性管理」「通信パターンの自己学習による異常検知」の3つが大きな特徴。とくに自己学習による異常検知は、制御システムならではの特徴を生かしたものである。

 ■制御系のネットワークセキュリティ監視が運用改善にも役立つ理由とは?

制御系のネットワークセキュリティ監視における「異常」は、サイバー攻撃によってのみ発生するものではない。機器異常やネットワーク装置の故障によっても発生するため、セキュリティ監視の機能が結果的に、システムの運用改善に役に立つからである。

 このようなネットワークセキュリティ監視は、電力設備やプラントなどの分野では普及が進んでいるが、ビルセキュリティの業界ではまだまだこれからである。その理由の一つには、個別のビルシステム運用現場に、制御系の異常アラートを正しく解釈できるセキュリティ人材を確保するのが難しいという理由が挙げられる。次回は、このような課題に対する国内の意欲的な取り組みについて紹介する。

著者Profile

佐々木 弘志/Hiroshi Sasaki

マカフィー サイバー戦略室 シニア・セキュリティ・アドバイザー CISSP。制御システム機器の開発者として14年間従事した後、マカフィーに2012年12月に入社。産業サイバーセキュリティの文化醸成を目指し、講演、執筆等の啓発及びコンサルティングサービスを提供している。2016年5月から、経済産業省 情報セキュリティ対策専門官(非常勤)、2017年7月からは、IPA産業サイバーセキュリティセンターのサイバー技術研究室の専門委員(非常勤)として、産業サイバーセキュリティ業界の発展をサポートしている(2019年10月現在)。

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