建物には、空調、照明、監視カメラなど、さまざまな設備機器が導入されている。それらを効果的に運用するシステムとしてビルディングオートメーションシステム(Building Automation System、BAS)が存在する。本連載では、制御・計測機器メーカーで各種ビル設備サービスを展開するアズビルが、「建物の頭脳」ともいえるBASやシステムを活用したエネルギー管理システム「BEMS」を紹介し、今後の可能性についても解説する。第1回目はBASを中心にBEMSも含めたビルシステムの全体像を明らかにする。
ビル内には、空調設備をはじめとする多様な設備機器が設置されています。それらの機器を運転や停止したり、部屋の温湿度を自動制御したり、監視しているのがビルディングオートメーションシステム(Building Automation System、BAS)です。
「BEMS(Building Energy Management System)」とは、BASで管理しているデータを利用して、エネルギーの消費量を把握、管理、分析するシステム。地球温暖化防止、省エネルギー、節電など、エネルギーに関わる多様な目標を達成するためには、欠かせない システムとなっています。
このように、建物内の快適な環境を維持、コントロールしつつ、省エネルギーを実現し、さらには、建物管理者の省力化にも貢献しているのが、BAS/BEMS/自動制御です。
では、BAシステムやBEMSを理解していただくために、今日に至るまでの歴史を振り返ります。
第二次世界大戦後、工場は大型化し、換気・暖房・加湿が必要となり、換気設備やボイラーが導入され始めました。そして、1950年代後半には冷房が導入されるようになりました。しかし、これらは、いずれも「物」(品質・性能の維持)のための空調でした。
現在の空調、「人」がいる空間のための空調が普及しだしたのは、1960年代に入ってからのことです。1964年開催の「第18回オリンピック競技大会」を控えた時期から、大型ビルの建設ラッシュとともに、まず暖房からビル空調が普及していきました。空調が全国に広まるに従って、顕在化してきた問題は、冷凍機、ボイラー、空調機などの設備機器の運転・停止と、室内の温湿度の制御でした。ビルが大型化されるに従って、人だけで対応することが困難になったからです。
そこで登場したのが中央監視装置(現在のBAS)と自動制御機器です。初期の中央監視装置は、専用室に設置する制御盤(下記画像)で一元管理するという考えでした。建物内には、温度指示計や電圧・電流計などの計器類を壁面全体に配置した「中央監視室」が設置され、建物管理者は中央監視室に居ながら、設備管理を効率よく行うことができるようになりました。
1970年代になると、デジタル通信ネットワークが採用された中央監視システムが登場します。設備や機器側に設置される「DGP(Data Gathering Panel)」と呼ばれるデータ収集装置と中央監視装置とが、通信接続される形態のシステムに進化しました。
一方で、1970年代には2回のオイルショックがあり、原油の供給逼迫(ひっぱく)と原油価格の高騰、それにより世界経済は混迷を極めました。建築市場も冷え込んだ時期ですが、BASや自動制御側では、「省エネルギー」を意識するきっかけであったと言えます。
やがて、マイコン技術を活用した自動制御機器として「DDC(ダイレクト・デジタル・コントローラー)」が登場し、一般空調の制御にも採用され、高精度かつ、BASとコントローラー間で、さまざまな信号を通信でやりとりできる時代が到来し、設備管理業務はさらに効率化されました。
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