「CIM導入には社内の“パラダイムシフト”が必須」、独自の資格制度など八千代エンジが説くAutodesk University Japan 2019(1/4 ページ)

「Autodesk University Japan 2019」の中から、総合建設コンサルタント・八千代エンジニヤリングのセッションをレポートする。同社は、2015年から全社を挙げて、BIM/CIM推進に取り組んできた。講演では、CIM推進室 室長 藤澤泰雄氏がこれまでの歩みを振り返るとともに、CIMの導入に舵を切った5つの理由を示し、目標とすべき技術者像について説いた。

» 2020年02月20日 05時06分 公開
[石原忍BUILT]

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 オートデスクは2019年10月、東京都内でプライベートイベント「Autodesk University Japan 2019」を開催した。本稿では、土木/インフラ向けセッションで、「BIM/CIMへの取り組みと目指すべき技術者の姿」と題した八千代エンジニヤリングの講演を取り上げる。スピーカーは、八千代エンジニヤリング 技術管理本部 CIM推進室 室長 藤澤泰雄氏。

「CIM導入は、社内の既成概念を大きく変えるパラダイムシフト」

八千代エンジニヤリング 技術管理本部 CIM推進室 室長 藤澤泰雄氏

 藤澤氏は、まずCIMとは何かについて、土木学会の会報誌から引用して再確認した。

 「これまでは2次元の図面で、計画、調査、設計、積算、施工、維持管理の各フェーズの役割を分担し、個別に最適化してきた。対してCIMは、計画、調査、設計の段階から3次元モデルを作成し、その後の施工や維持管理でも3次元モデルと連携させ、建設事業(Construction)で発生する情報(Information)をライフサイクル全体で共有/活用(Management)して、建設生産性を向上させようという考え方」(土木学会誌 第100巻 第6号、2015年6月)と定義している。

 しかし、CIMを進める上でよく耳にする疑問が、ガイドラインに沿えばいいのかということや要領基準が無いこと、2次元の設計手法で、昔からやってきているので3次元には変えにくい、さらに3次元の地形データはどうすれば手に入るかといったことなどが多く挙がるという。そのため藤澤氏は、これらの疑問に対する回答を順を追ってひも解いていった。


【BIM/CIMを進める上でよく聞く疑問】

 ■国土交通省のCIM導入ガイドライン(案)に沿えばいいのか?

 ■要領基準が無く、何をしてよいか分からない

 ■3次元の地形データ(現況データ)はどうすれば入手できるか?

 ■2次元の設計手法でずっとやってきている

 ■どんなソフトウェア/ツールを使うべきか?

 ■歩掛は無いのか?

 ■誰に頼めばよいか?


 国のCIMガイドラインはあるが要領基準が無いことについては、「ガイドラインはあくまで目安。基準が無くても、どのように3次元データを自分の設計に採り入れるのか、自身で考えることが重要」として、「一例として、土木は現況地形の上に構造物を作るのが基本のため、2次元のデータに3次元モデルを重ねるだけでも意味がある」と説明する。

 CIMを作る前に必要となる3次元の現況データは、ライカジオシステムズの3Dレーザースキャナーで取得した北海道・札幌の地下鉄南北線やダムの監査廊の点群データを映し出し、取得方法の一つとして解説。

3Dレーザースキャナーで取得した地下鉄南北線の点群データ

 また、「3次元でどのように設計するのか、どのツールを使うかは、設計者が自由に決められるが、やり方や使用データはバラバラ。作業の仕方を基準通りに進めるときに、その作業量を人工で表したものが”歩掛”だが、現在のCIM作業は、歩掛をみていない。将来は、ソフトウェアに関係なく、3次元で行う作業内容を数値化して、人工として算出することを考えている」(藤澤氏)。

CIM設計時のワークフロー
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