男女別/正規・非正規別/年齢層別に2019年対2009年の増減数を見ると、最も大幅に増加しているのは65歳未満の女性の非正規社員で176万人増となっており、次いで65歳以上の女性の非正規社員が120万人増、65歳以上の男性の非正規社員が117万人増となっている(図表4)。
一方、65歳未満の男性の正規社員は11万人の減少、65歳以上の男性の正規社員は29万人増にとどまっており、就業者数の増加を支えているのは非正規社員の増加、とくに女性の非正規社員が増えたためだといえる。
主要産業別に就業者数の推移を見ると、医療・福祉が2002年の474万人から2019年には843万人に増え、情報通信業が同158万人から同229万人へと増加している(図表5)。
一方、製造業は同1202万人から同1063万人に減少、建設業は同618万人から同499万人(対2002年比19%減)に減少している。
建設業就業者の年齢層別の比率を2009年と2019年で比較すると、65歳以上の比率が2009年の8.1%から2019年には16.4%に上がっている。55歳以上の比率も、同32.5%から同35.2%に上昇しており、高齢化が一段と進んでいることが分かる(図表6)。
建設業就業者で女性が占める比率の推移は、2008年の14.6%から2019年には16.8%に上昇しており、建設業においても女性活用の重要性が高まっている(図表7)。
2020年に入ってからの月別の就業者数の前年同月比の増減を見ると、2020年4月には就業者数は80万人減少している(図表8)。月別の就業者数が前年同月を下回るのは実に7年4カ月ぶりであり、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で急速に雇用環境が悪化していることが分かる。
正規社員・非正規社員別では、正規社員は63万人増加しているが、非正規社員は97万人も減少している。減少している非正規社員の内訳を細かく見ると、パートが46万人減で、アルバイトが32万人減となっており、パートやアルバイトの減少が就業者数減少の大きな要因になっている。
また、2020年4月には休業者数が前年同月比で420万人増加して597万人に達している(図表9)。そのうち300万人が非正規社員。休業者とは企業に雇用されてはいるが休業状態にあり企業から休業手当を受けている人であり(休業者の詳細な定義は注1を参照)、こういった人たちが職を失うことにより一気に失業者数が増加する危険性があると考えられ、今後の情勢を注視することが必要である。
注1:労働力調査における休業者の定義/仕事を持っていながら調査週間中に病気や休暇などのため仕事をしなかった者のうち、1.雇用者(その仕事が会社などに雇われてする仕事である場合)で、仕事を休んでいても給料・賃金の支払を受けている者または受けることになっている者、2.自営業主(その仕事が自分で事業を経営して行う仕事である場合)で、自分の経営する事業を持ったままで、その仕事を休み始めてから30日にならない者。
労働力調査の結果を分析することで、リーマンショック後は景気回復を背景に就業者数は順調に増加してきてはいるが、増加した就業者の中心は非正規社員、特に女性の非正規社員であり、就業構造は大きく変化していることが分かる。
全体としては就業者数が増加する中、建設業の就業者数は減少し、高齢化が進んでいる。また、建設業においても女性の就業者の比率は高まっており、今後は女性活用の重要性が高まりそうである。
そのような中で、新型コロナウイルス感染症拡大は非正規社員の雇用に大きな影響を及ぼしている。2020年4月には非正規社員が97万人減少し、597万人の休業者のうち300万人は非正規社員である。今後、非正規社員の雇用情勢がさらに悪化し、失業者が一気に増加することが懸念される。
ヒューマンタッチ総研(所長:高本和幸)
ヒューマンタッチ総研は、ヒューマンホールディングスの事業子会社で、人材紹介事業を行うヒューマンタッチが運営する建設業界に特化した人材動向/市場動向/未来予測などの調査・分析を行うシンクタンク。独自調査レポートやマンスリーレポート、建設ICTの最新ソリューションを紹介するセミナーなど、建設業界に関わるさまざまな情報発信を行っている。
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