清水建設は、成長が顕著なアジアを中心に、大規模で高度な技術力が要求されるインフラ工事を受注し、2019年5月に発表した長期ビジョンで掲げた2030年の売上比率で海外25%の達成を目指している。
清水建設は2020年4月、共同企業体(JV)を組成し、フィリピン共和国で大規模なインフラ工事を2件受注したことを明らかにした。総受注総額は1000億円を超え、うち1件は、フィリピン共和国運輸省から受注した同国初の地下鉄工事「マニラ首都圏地下鉄事業」。
マニラ首都圏地下鉄事業で、清水建設JVは部分開業区間のその1とその2の工事を担当し、請負金額はその1が約670億円で、その2が約370億円。
受注したもう1件の工事は、フィリピン共和国公共事業道路省が発注した「ダバオ市バイパス建設事業」の南・中央区間の施工で、請負金額は約270億円(いずれも税別)だ。
マニラ首都圏地下鉄事業でのJVの構成企業はフジタや竹中土木、地元のEEI、ダバオ市バイパス建設事業は地元のUlticonと竹中土木。
フィリピン共和国は、東南アジア諸国の中で日本から最も近く、同国の持続的発展は日本や東南アジア地域の安定と発展に欠かせないと見られている。「政府開発援助(ODA)を効果的に用いることで、経済関係や人的交流など多様な分野で日比関係を強化していく必要がある」という日本政府の方針を背景に、同国にとって日本が最大のODA供与国になっている。
安倍晋三首相が2017年1月にフィリピン共和国を訪れた際に、5年間で官民併せて1兆円規模の支援を行うことを表明しており、清水建設JVが今回受注した工事はいずれもこの表明に基づく本邦技術活用案件(STEP)となる。
マニラ首都圏地下鉄事業は、深刻な交通渋滞の緩和を目的に計画されたもので、首都圏北部ミンダナオ通りとアキノ国際空港が位置する南部ウエスタンビクタンを結ぶ32.4キロの地下鉄区間に、15駅舎と電車1車両を格納可能な基地を整備する。清水建設らJVは、先行して部分開業する6.9キロの区間に、3駅舎(タンダンソラ駅やキリノハイウェイ駅、ノースアベニュー駅)と電車1車両を格納する基地を結ぶ3区間に計6本(上下線各3本)の線路や総延長9.3キロに及ぶシールドトンネルを建設する。
2019年11月に契約した工事では、タンダンソラ駅と車両基地の整備やシールド機の調達、開削トンネルの施工を行う予定で、工期は67カ月を見込んでいる。今回、契約した部分開業区間その2工事では、キリノハイウェイ駅やノースアベニュー駅の主要躯体建設工事と、シールドセグメントの調達を実施し、49カ月の工期を想定している。なお、その3工事でシールド工事と2駅の建築設備工事が発注される見通しだ。
一方のダバオバイパス建設プロジェクトは、ミンダナオ島の交通渋滞の緩和や経済と社会発展を目指しプランニングされ、工事内容は、ダバオ市南部シワランから中央部インダンガンを結ぶ全長約30キロバイパス道路の建設。清水建設JVが受注した工区は、同バイパスの中央部分に当たる全長10.7キロの区間となる。
同区間では、高さ8メートル、幅10メートル、掘削断面が約80平方メートル、長さ2.3キロのトンネル2本や3カ所に設置する計900メートルの5橋梁(きょうりょう)、幅員6.7メートルの片側2車線、延長7.9キロの切り盛り道路の工事が実施される。工事にあたっては、3社で担当工区を分け、清水建設と竹中土木はトンネル工区を担い、地元企業が土工事と橋梁工事を担当し、工期は37カ月を想定している。
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