積木製作は2018年6月7日、VR(バーチャルリアリティー)技術を活用した訓練、研修コンテンツ「安全体感VRトレーニング」の建設現場シリーズを発売した。VR研修とはどういうものか、なぜVRなのか、積木製作セールスディビジョン シニアディレクターの関根健太氏に聞いた。
積木製作が開発した研修コンテンツ「安全体感VRトレーニング」の建設現場向けシリーズ第1弾は、「可搬式作業台を使用した危険体験」。被験者はVR用のヘッドセットを付けて、BIMデータでリアルに再現された3次元の建設現場に入り、可搬式作業台を使用した作業を仮想体験する。トレーニングには、作業手順を含めた危険箇所のチェックなどの14項目が設定されており、安全帯をつりボルトに付け忘れたり、手掛かり枠の設置などを怠ると、作業台から墜落してしまう。座学ではできないリアルな体感を通して、安全対策を身を持って覚えることができる。トレーニング時間は5〜10分で、体験後には見落としリストなどの採点結果が表示される。
既に第2弾「開口部廻りの危険体験」、第3弾「外部仮設足場における危険体験」のコンテンツが決まっており、7月以降に販売を開始するという。積木製作セールスディビジョン シニアディレクターの関根健太氏に開発意図などを聞いた。
――建設業界向けVR研修とは
関根 当社は、建築のCGパースを制作する企業として2003年に設立。VRのコンテンツ制作に関わったのは今から5年以上前のこと。当時はデバイス=VRヘッドセットもまだなく、ゲームエンジンを使ったVRコンテンツを試験的に作り、展示会などでゲームコントローラーを使ってデモンストレーションを行っていた。
その後、2013年にOculus(オキュラス)社のDK-1が発売され、設計イメージを3次元化して見せることができるようになり、主に広告、イベントなどで使われた。
ここ最近はデバイスの解像度が上がり、低コストデバイスも普及してきている。現在ではバーチャルショールームや建築プレゼンテーション、大規模な都市計画を3Dビジュアル化したデジタルコミュニケーションツールを展開している。
――なぜVRで安全教育なのか
関根 教育という側面から見ると、座学などの受動学習に比べ、体験などの能動学習は習得効果が高い。その利点から、2017年4月に「安全体感VRトレーニング」を開発し、今回の建設現場シリーズも含めると3つのコンテンツをリリースしている。
最初の001は、建設現場で最も多い労働災害事故の「墜落」を取り上げた。CGで細部まで再現した街並みや建設現場の中に、仮設足場を用意。体験者がVR空間の中で、実際に体を動かすことで没入感を向上させ、自分の体験として心に残るため、習得率の高い教育が実現する。
安全教育はゲーム感覚ではダメで、危機感が薄れてしまう。死の恐怖を感じるような心に響くリアル感が重要だ。当社が建築のビジュアライゼーションをやってきた強みがあるからこそ、実際の環境に近い空間を作り出すことができる。既に001は40社で導入されている。
続く、002は鉄道業界にスポットを当て、車両基地構内での重大事故「触車」のコンテンツをJR東日本運輸サービス監修のもと制作した。新人車両整備士の不注意とベテラン整備士の気の緩みから起こる事故の2パターンで、鉄道会社向けの教育ツールとして利用されている。
「安全体感VRトレーニング」は、多くの要望に応えるために、汎用的な労働災害を体験できるラインアップをそろえ、パッケージ化して販売している。スマートフォンアプリも用意しているので、手軽に体験することができる。
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