鈴木氏は、ビルオートメーションシステム「Metasys」の新バージョン「10.1」について、新エンジン「SNE」または「SNC」を搭載し、オープンプロトコルとサイバーセキュリティへの対応を強化した点を挙げた。
SNEとSNCは、スーパーバイザリーコントローラーで、ビルに取り付けられた全てのコントローラーを統合管理し、仮に操作端末の一部が稼働を停止しても、代わりに制御する。スケジュール運転や警報の監視、ヒストリカルデータの収集も行え、GUI(Graphical User Interface)で、画像や図形などを使った直感的な操作に応じている。GUIは、セキュリティリスクを視認化する「サイバーヘルスダッシュボード」を有しており、サイバーヘルスダッシュボードは、ユーザーアカウントの設定やパスワードの誤入力、ログアウトの形跡、アクティブユーザーの数、エンジンの状況を確かめられる。
システムのオープンプロトコルへの対応については、「ビルシステム標準プロトコルやプロトコルリビジョン15(BACnet2012)、過去に広く使用されたLONプロトコル、通信プロトコル“ModBus”、旧来のMetasys N2プロトコルといった多様なプロトコルに応じているため、他社製のシステムと相互接続性が高い」(鈴木氏)。
オープンAPI(Application Programming Interfaces)は、実装方式をSOAP(SimpleObject Access Protocol)からREST(Representational State Transfer)に変え、システム内のオブジェクトに対するデータ読込みや書込み、コマンドのインプットが容易になり、他社製のアプリケーションとの統合が簡単になった。
両エンジンのサイズは、従来品の「NAE55」と比較して60%の小型化が図られている上、OSに「Linux」を採用している。「従前のMetasysでは、Microsoft製組み込みOS“Windows Embedded”を使っていたが、OSのサポート体制がMicrosoftの方針に依存するといった問題があったため、当社単体で支援しやすいLinuxに切り替えた」(鈴木氏)。
将来的なバージョンアップを見据え、内蔵した大容量メモリは空き容量を残している他、両エンジンはバックグラウンドファイル転送機能を有している。鈴木氏は、「以前のスーパーバイザリーコントローラーは、ビルシステムを全て停止させなければ、インストールしたソフトの更新することができなかった。バックグラウンドファイル転送機能は、更新したいファイルを指定した宛先に送り、任意のタイミングでアップデートが進められるため、ビルシステムの動きを止める必要がない」とPRした。
不正なソフトウェアの読み込みや許可がされていないUSBポートの使用は、BIOS(Basic Input/Output System)レベルで感知して、実行を阻止する。機体には、交換不要な大容量コンデンサーを実装することで、バッテリーレスを果たしている。「これまで、予期せぬシャットダウンに備えバックアップ用にバッテリーを積んでいたが、大容量コンデンサーを組み込むことで、メンテナンスフリーとなった」(鈴木氏)。
新バージョンの設計・施工とメンテナンスは、経済産業省が公表したサイバーフィジカルセキュリティガイドラインに準拠し、顧客のセキュリティマネジメントを後押しするため、機器の機能や設定だけでなく、文書や構成図の管理にも取り組む。
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