医薬品倉庫の温熱環境を改善するファンユニット、1000m2の倉庫で導入コスト半減製品動向

大成建設とクリフは、自動搬送装置を利用して自由に移動し、自動ラック倉庫内のどこにでも設置可能な新型ファンユニット「T-Rack Fan」を開発した。

» 2020年05月13日 10時00分 公開
[BUILT]

 大成建設とクリフは共同で、医薬品を保管する倉庫内の温度分布を平準化する新型ファンユニット「T-Rack Fan」を開発した。新ユニットの導入で、大規模な改修工事を伴わずに、ローコストかつ短工期で倉庫内の温度環境を改善することが可能となる。

天井高の医薬品倉庫で運用を止めずに設置可能

T-Rack Fan外観 出典:大成建設
T-Rack Fan概要 出典:大成建設

 これまで、医薬品を室温保管する自動ラック倉庫は、天井高さが20〜30メートル程度と高いことが多く、気流の流れが滞り、年間を通じて国際基準に沿った15〜25度の温度範囲を維持することが難しかった。そのため、空調設備改修などを行うが、工事用足場を組む大規模改修工事が必要となることに加え、倉庫の運用も長期間停止させる必要があった。

 そこで両社は、自動搬送装置を利用して自由に移動し、自動ラック倉庫内のどこにでも設置できるファンユニットT-Rack Fanを実用化した。

 T-Rack Fanの設置は、自動搬送装置で荷物を出入庫するのと同様の作業で完結する。ファンユニットを所定位置に移動した後は、電源を接続するだけで始動。また、季節に応じた設置位置の変更や空気が滞留しやすいポイントに移して、重点的に温度環境を改善することもできる。

T-Rack Fan設置稼働イメージ 出典:大成建設

 工事の際には、自動搬送装置に据え付けて移動するため、倉庫の運用を止めることなくコンパクトに設備工事が行えるメリットがある。そのため、足場を組む費用や運用停止期間の営業損失も無いため、従来よりもコストを抑えられる。仮に、1000平方メートル程度の自動ラック倉庫内に、複数台を設置する場合は、従来型のファンを設置する工事(空調・電気・建築工事含む)に比べ、約50%以上の工事費が削減されるという。

 さらに、温熱ムラを可視化できる大成建設の温熱環境シミュレーションを用いれば、既存ラック倉庫の温度環境の再現やファンユニットの最適な台数、配置場所、吹き出し方向や角度の改善提案をすることもできるようになる。

 今後、大成建設とクリフは、ファンユニットにバッテリーを搭載したワイヤレスタイプの開発を検討していくという。導入先としては、温熱シミュレーションを活用し、倉庫内の温熱環境改善を計画している医薬品の既存自動倉庫を対象に積極的に提案するとしている。

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