VRで重機を遠隔操作、大成建設が新システム情報化施工

大成建設はヘッドマウントディスプレイ(HMD)を用いて、遠隔地から実際に搭乗している感覚で重機を操縦できるシステムを開発した。災害現場などの二次災害の危険がある場所での作業などに活用できるという。

» 2017年01月25日 06時00分 公開
[長町基BUILT]

 大成建設は、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)を用いて、遠隔地にいながら実際に搭乗している感覚で重機を操縦できる、臨場型映像システム「T-iROBO Remote Viewer」を開発したと発表した。

 災害対応や高放射線状況下での復旧工事では、二次災害の危険を伴うことから、安全性が確保されるまでは人が立ち入れない状況となるため、現場周辺で作業することが困難なケースが多い。このような状況で復旧工事などを行う場合、従来の遠隔制御システムでは、操縦者が重機に取り付けたカメラや、作業現場で重機を俯瞰する位置に設置したカメラから撮影した映像を複数モニターに表示させ重機を操縦する。

 だが、この方法では、表示映像ごとに視点が変化するため、作業効率が著しく低下し、また、作業現場全体を俯瞰する位置にカメラを設置しなければならず、災害直後にカメラを設置すること自体難しい。

 そこで、大成建設は安全な遠隔地から建設作業を行うため、HMDを用いて、実際に搭乗している感覚で重機を操縦できる、新臨場型映像システムを開発し、実証試験を経て、その有効性を検証した。

開発した新臨場型映像システム(クリックで拡大) 出典:大成建設

 同システムは、重機側に設置した左右の魚眼カメラにより、一度に前方の約220度までの広域映像を取得。専用通信機器で映像情報を遅延なく送受信するため、リアルタイムに重機側と同じ映像をHMDに表示する。映像による奥行きや距離感などの臨場感を再現するため、魚眼カメラはステレオ方式を採用した。それにより重機側で取得した球面映像を操縦者側で平面映像に変換し、HMDにステレオ表示することで、重機の先端に取り付けてあるアタッチメントなどを正確な位置に移動させることが可能だ。

システムの構成イメージ(クリックで拡大) 出典:大成建設

 さらに、重機の操縦者が見たい方向にHMDを動かすと、HMD内に表示される映像も連動して見たい方向に移動するため、重機側で取得したあらゆる方向の映像を確認しながら、効率的に作業を行うことができる。

 今後、同社では災害復旧工事に限らず、遠隔から安全で効率的な作業が求められる建築・土木工事など、より多くの建設現場に同システムを適用し、機能や操作性などのさらなる向上を図り、普及展開を進めていく予定だ。

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