ICT導入は、一定の功を奏した一方で新たな問題も浮上した。スマホ点検は、車道のタイヤ通行箇所には有効だが、歩道や自転車通行帯は検出不可なことに加え、生活道路に多い経年劣化による舗装損傷/埋設企業者の埋戻しパッチング不良に伴う損傷へも対応が求められた。
そうした中、2017年度の試みがきっかけとなり、多様な業種の企業から技術提案を受け、そのうちの一つとして2019年10月から、AIを活用した道路点検の開発に着手した。今までの開発形態は、複数社が関わっていたが、今回は目視点検から、道路パトロール支援(スマホ点検)、AI点検の全てを1社にパッケージ化する形としている。
AI点検の対象としたのは、ひび割れ検知で、車にドライブレコーダーを付けて1日走行する。点検後、SDカードを抜いて市役所のPCに取り込むと、次の日の朝までにひび割れの状態が3段階に色分けされて表示される。
地図上にカラーの丸で示されるスマホ点検(段差)と、カラーの線で表示されるAI点検(ひび割れ)の両方を重ねることで、即時現地へ見に行く必要のある場所が把握可能になる。点検データだけでなく、住民から寄せられる位置情報も含めた要望コメントや委託業者の報告者もクラウドに集約することで、住民要望の受付から、対応指示、調査結果までの一連の業務を一元管理することが実現する。
総括で多並氏は、「人による定期点検は、全区道は月1回、主要な幹線道路は週2回の頻度で行っている。随時データは更新されるため、蓄積されたデータを俯瞰すれば、時間軸で道路の変化がみえてくるのではないかと検証を進めている。例えばひび割れが先に出て、次に段差が生じる箇所が分かるようになり、似たような場所ではひび割れの変化が出たときに補修すれば防げる。逆の場合は、地下の下水管などに管割れがあって空洞があるのではと想定することも可能になる。道路変状の変化を可視化することで、修繕のやり方(舗装修繕計画の立案)も最適化するはずだ」と今後の展開について語った。
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