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» 2020年04月21日 06時00分 公開

“品川区”が試行するICT/AIの区道維持管理、従来手法より2.5倍も異常検知インフラメンテナンス×AI(3)(1/2 ページ)

東京・品川区は、道路管理者として行っている区道の日常点検に、ICTやAIを導入し、将来にわたり持続可能なインフラ維持管理体制の構築を進めている。実用化すれば、異常発見時に遅滞なく応じられるようになるだけでなく、ICT点検の結果に基づく1次現場対応のアウトソーシング化で職員の事務軽減、住民からの道路に対する要望への適切な対応などが期待される。

[石原忍,BUILT]

 ここ数年、AI技術を活用して、インフラメンテナンスの業務プロセスを改善する取り組みが進んでいることを受け、土木学会(構造工学委員会 構造工学でのAI活用に関する研究小委員会)と、インフラメンテナンス国民会議(革新的技術フォーラム)は、2019年11月に都内の土木学会講堂でシンポジウムを開催した。

 当日のセッションの中から、自治体が道路の維持管理でICTやAIを活用した実事例として、東京都品川区の試みをレポートする。登壇者は品川区 防災まちづくり部 道路課長 多並知広氏。

2017年にスマホ点検と住民要望情報の電子化を導入

品川区 防災まちづくり部 道路課長 多並知広氏

 品川区の概要として、人口は40万人(2019年10月1日現在)とここ数年微増傾向にある。区の面積22.8平方キロに張り巡らされた区道の総延長は328キロで、平均道路幅員は約6メートル。

 「品川区は、予算規模や道路率など23区の中でも平均的とされる。特徴として、区の北側には品川駅のある港区に接し、リニア駅が新設された。海に面する東側には、日本有数のコンテナ倉庫“大井コンテナ埠(ふ)頭”があり、交通量が多く広い幅員の道路や港湾道路とも接続されている。一方で西側は、戸越銀座商店街に代表される賑(にぎ)わいがあるが、木蜜地域が広がり、4メートルに満たない狭隘(きょうあい)な道路が少なくない」と(多並氏)。

 区道の維持管理に関しては、以前は現業の職員が巡回していたが、2006年に全面委託へ切り替わった。その後10年が経過し、さまざまな課題が浮上してきた。多並氏は、「道路管理者は定期的にパトロールをしているが、それ以外に住人からの問い合わせが増えてきており、この先を見据えたとき、現状のままではインフラ維持管理が継続できないと思った。そこで持続可能な維持管理体制を構築すべく、2017年度に新しい点検技術の試行に乗り出した」とICT点検に至った理由を説明。

品川区の概要

 2017年度の取り組みは、スマートフォンにもともと組み込まれている加速度センサーを使って振動(段差)の数値化と、GPS機能の位置情報も一緒にクラウド上でデータ化した。もう一つが住民要望情報の電子化で、地域住民から寄せられる道路に関する要望をこれまで紙で処理していたが、データ化して地図情報に落とし込んだ。

 ICT活用の成果としては、導入前(2016年度)と導入後(2018年度)を比べると、スマホ点検の数自体はそれほど増えなかったが、人の目で行う点検のサポートとなり、異常発見の件数が増加したという。スマホ点検の結果は、緊急性の違いで3段階(赤/黄/緑)に色分けして表示され、危険度の高い箇所から人が点検するため、目視点検で従来に比べ約2.5倍も発見した。点検精度が上がったことで、住民から送られてくる苦情なども、約半分となり、結果として職員の負担軽減にもつながった。

スマホ点検の導入前と導入後の比較
住民要望情報の電子化

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