東急コミュニティーは、建築総合展「住宅・ビル・施設 Week 2019」の講演で、失敗しないマンションの大規模改修工事をするにはどうすべきか、2つの発注方式のメリットとデメリットをレクチャーした。
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リード エグジビション ジャパンは2019年12月11日〜13日、東京都内で建築物全般を対象とした総合展「住宅・ビル・施設 Week 2019」を開催した。連日行われたセミナーの中から、「失敗しない大規模改修工事」と題した特別講演の概要を紹介する。
スピーカーは、東急コミュニティー常務執行役員でリフォーム事業部長を務める佐藤潤氏。講演では、マンションの大規模改修工事において失敗しないために必要なポイントを管理会社の視点から解説した。
東急コミュニティーは、2020年で設立50周年を迎える建物管理を中心事業とする企業。2013年までは単体で東証に上場していたが、現在は東急不動産ホールディングスを構成するグループに名を連ねている。管理物件はビル施設、公共施設・公営住宅、マンションと多彩で、1100件を超える管理実績を持つ。
講演を行った同社常務執行役員兼リフォーム事業部長の佐藤氏は、国土交通省の調査結果※1を示し、このところマンションに永住するという意識が高まっている現状を指摘。その裏付けとなる2018年時点では、「国民の約1割がマンションに居住していると推定できる」とのデータを示し、住居としての高機能化や付加価値化が進んだことをその理由とした。
一方で佐藤氏は、築40年以上のマンションの約4割、築30年以上の物件では、約2割が適時適切な大規模修繕ができていないとの調査結果に触れ、「マンションに長く住むには、建物のメンテナンスや修繕を適切に行う必要がある」と建物管理会社としての考えを述べた。
※1 国土交通省の調査とは、決まって支給する給与(所定内給与+所定外給与)と特別給与(ボーナスなど)の合計額
当たり前の話だが、建物は経年とともに劣化する。しかし佐藤氏は、劣化には“見えるもの”と“見えないもの”があると説明する。ひび割れやサビ、漏水などの劣化は、日常生活の中で肉眼で目に付くので発見しやすい。これに対して、受水槽や給排水管、給水ポンプなどの老朽化は通常は見えず状況把握が難しいとした。
これらは物理的な劣化だが、佐藤氏は、法律改正や社会的要求の変化に伴う「社会的劣化」もあると言及。また、照明のLED化に代表されるような、技術の進化や向上に左右される相対的な劣化の「機能的劣化」についても触れた。
佐藤氏は、多種多様な劣化に対応するには「適切な維持保全と管理を行うこと、適切な時期に修繕を行うことが必要」と繰り返す。ここでいう“維持保全”とは、清掃や点検、保守、補修、更新などのことで、日々行うメンテナンスを指す。さらに、実行するためには「適切な資金計画と修繕計画の立案が重要だ」と提言した。
マンションには、竣工後のライフサイクルを考慮して、一般的に「長期修繕計画」が立てられる。計画では、マンションに使われる部材や設備の耐久性を考慮して設定され、25〜30年先までの修繕計画と概算費用がプランニングされる。定期的な点検や診断に基づく適切な「修繕」と「改修」を行うことで、マンションの価値は長期的に維持される。ちなみに、修繕は元の性能に戻すこと、改修は元の性能よりも快適性や利便性などを高める「改良」と修繕を同時に行うことを意味する。
マンションでの永住意識が高まった現在、このような管理の状態は以前よりも重視される傾向にある。佐藤氏は、2019年にマンション管理業協会を事務局とする「マンション管理適正評価研究会」が発足し、物件の維持保全に関する管理状況を流通市場で評価する仕組みが検討されていることを紹介した。
マンション管理に関しては、これまで明確な指標がなかった。佐藤氏は、この研究会の発足により業界内で「維持保全を対象とした明確な基準を策定する動きが進んでいる」と期待を寄せている。
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