講演の中盤には、ジェネレーティブデザインの話題に移り、2018年にβ版が公開された建設向けジェネレーティブデザインソフト「Project Refinery」が紹介された。
Project RefineryはRevitにプラグインし、データの最適化が行える他、現場におけるクレーンとトラックの効率的な配置なども割り出せる。ニコラ氏は、「英国に本社を構える不動産管理会社のLand Securities Groupが、ジェネレーティブデザインが設計検討プロセスのスピードアップに役立つかを調べるため、試験的にProject Refineryを導入した。Autodeskとパートナーシップ契約を結び、Project Refineryを使用し、12週間以内にどれだけ多くの潜在的マス(建物の形状と大きさを含んだ3Dモデル)を作り出せるか実証試験も実施した。結果は200種類の潜在的マスが作れることが明らかになった。これまで12週間かかっていた量の潜在的なマスの調査を1週間に短縮することも判明した」と語った。
スマートスペースについては、「特定の空間にIoTセンサーなどを設置し使用状況を可視化した場所を指す。Autodeskでも、2018年にラスベガスで開催したAutodesk Universityでカメラを会場に配置し、スマートスペースを構築した。撮影した動画を基に、コンピュータビジョン(コンピュータを用いた画像や動画解析)により、来場者の行動を追跡することに成功している」と話した後に、スマートスペースやデジタルツインの活用事例や関連するAutodeskの取り組みを伝えた。
活用事例では、とりわけ橋の利用状況を見える化するシステムと温度などで変わる人の行動を視認化するシステムが関心を集めた。前者は、橋にカメラとIoTセンサーを装着し、現実の橋と渡る人の動画をリアルタイムに見れるとともに、人の動きや橋の状態が仮想空間上にある3Dモデルに反映され、ログも残せるため構造物の管理に貢献する。
後者は、建物内に設置したIoTセンサーで人の動線を感知し、そのデータと温度やCO2などの影響を専用のAIで解析し人の動作がどう変化したかを導き出す。AIで事前に予測したデータと実行された行動を比較し、異なる場合は、その誤りをシステムに反映していくことで、短期間でAIの精度を高めていける。
Autodeskの取り組みでは2017年に、GISマッピング ソフトウェアを展開するEsriとパートナーシップを結び、GISとBIMのデータを統合しやすい環境を整備していることを強調した。ニコラ氏は、「GISとBIMが連携することで、大規模な構造物の運用が改善すると考えている。2019年10月には、GISとBIMデータを統合させられるコネクター“Autodesk Connector for ArcGIS”をリリースした。BIMとGISが組み合わさることで、人口増加や洪水などの外部要因に対して、都市が対策を練る必要がある場所を予測することに寄与する」と提唱した。
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