西松建設は、トンネルのシールド工事で、施工の省人化・効率化を図るため、セグメントピースに印字されている製造番号を「文字認識読取技術(OCR)」で読み取るセグメント管理システムを開発した。今後は、CIMモデルとの連携も視野に入れ、施工だけでなく、セグメント製造工場とデータ連携し、生産計画や維持管理の段階でも活用して、サプライチェーンマネジメントまでの発展させる。
西松建設は、シールドトンネル工事で、トンネル覆工部材のセグメントピースに印字されている製造番号を「文字認識読取技術(OCR)」で読み取る新たな管理システムを開発し、国土交通省関東地方整備局発注の「横浜湘南道路トンネル工事」に導入した。
セグメント管理システムは、セグメントピースに関する受け入れから、検査、仮置き、坑内搬送、組み立てまでの一連の管理業務を簡素化し、施工品質の向上も同時にもたらされる新技術。国土交通省の「建設現場の生産性を飛躍的に向上するための革新的技術の導入・活用に関するプロジェクト」に選定されている。
開発の背景には、近年、大規模シールド工事では、掘進の高速化が求められていることがある。時間あたりのセグメントピースの取り扱い量が膨大となり、取り外しが不可能な嵌合(かんごう)によって組み立てるワンパス型のセグメントを使用するケースが多い。また、取り扱うセグメントピースの種類も、導入現場では約100種類と多岐にわたり、搬入順序を間違うことなく切羽に供給しなくてはならない。
これまで、現場でのセグメントピース管理は、紙ベースや口頭で行われていたため、確認や管理に多大な時間と労力が費やされていた。
昨今はICタグやQRコードを用いて、対象とする資材の情報をデジタル化し、これをマーカーとして利用する管理システムが、施工時および維持管理の現場で、建設資材の経路を追跡するトレーサビリティ確保に有効活用されている。ただ難点として、この手法では、全てのセグメントピースに対し、マーカーを貼り付ける必要があったため、作業効率の向上を相殺してしまい不経済を招くといった課題があった。
西松建設のセグメント管理システムは、追加マーキングや専用読取り機は不要で、新たなマーキングに頼らず、各セグメントピースに印字されている製造番号をOCRでデジタル化する。各セグメントピースの仮置き場所や組み立て順序/位置などの情報とひも付け、受け入れから組み立てまでの各工程で、セグメントピースの利用状況や在庫状況などの情報をクラウド上の専用アプリで確認して、一元管理することができるようになる。
また、プロセスに応じて、作業状況がその都度記録されるので、リアルタイムに作業進捗や在庫状況の把握と共有が可能になり、省人化と効率化につながる。例えば、受け入れ管理は、従来は2人で遂行していたが、このシステムを適用することで、たった1人での管理が実現する。データはクラウドに上がるため、施工者だけでなく、発注者も含め、現場状況を誰でも、いつでも、どこからでもチェックできる。
想定される導入効果としては、受け入れ検査で、おおよそ1〜2人の管理要員の省人化をはじめ、受け入れ検査票や受払簿などの帳票が自動作成されることで、管理業務も軽減される。他にも、セグメントピース管理状況の見える化により、シフト交代時の引き継ぎ時間が短縮されるという。
今後は、横浜湘南道路トンネル工事での運用実績を踏まえ、さらなる効率化と適用性、柔軟性の高いシステムを目的とした改良が予定されている。また、CIMモデルとの連携も検討し、施工現場だけにとどまらず、竣工後にも情報を引き継ぎ、維持管理での活用も見込む。
さらに上流サプライヤーのセグメント製造工場ともデータをリンクさせ、工事進捗情報を工場の生産計画の立案にも応用して、工事に関わる企業間を横断した生産管理システム「サプライチェーンマネジメント(SCM)」の構築までを構想している。
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