奥村組とパスコは山岳トンネル工事における施工情報を一元管理し、3次元データ作成の簡易性と快適な操作性を有するCIM用ソフトウェアを共同で開発し、実工事での運用を開始した。
奥村組と空間情報事業を展開するパスコは2017年4月、山岳トンネル工事における施工情報を一元管理し、3次元データ作成の簡易性と快適な操作性を有するCIM用ソフトウェアを共同で開発し、実工事での運用を開始した。
国土交通省は2012年度から、建設事業全体における事業効率のさらなる向上を図るためCIMの導入を推進している。山岳トンネル工事へのCIM導入時には、基本となる3次元地盤モデルを作成し、同モデルにトンネル掘削や地山に関する各種計測データを連携させる必要がある。しかし、これらの作業には煩雑な3次元CADの操作などで多大な時間を必要とする。導入したCIMを円滑に運用するためには、その扱うデータ量の多さから高性能なPCが必要であるなど、現場への導入とその運用にも高いハードルがある。
今回共同開発したソフトウェアは、大量データの高速処理と高いレスポンスに強みをもつパスコ保有の3次元基本ソフトウェア「PADMS」をベースとして、山岳トンネルCIM用にカスタマイズすることにより、データ作成の簡易性と快適な操作性を実現した。これにより現場のCIM導入、運用にかかる負荷を大幅に軽減させることができる。
同ソフトウェアは、建設関係団体のメンバーで構成されたCIM技術検討会トンネルWGで取りまとめた「CIMトンネルモデル作成ガイドライン」に準拠しているという。
同ソフトウェアの特徴としては3次元地盤モデルを、3次元データと2次元図面を組み合わせた「準3次元地盤モデル」として作成することで、同モデルの作成に要する時間を約10分の1に低減する。掘削管理に使用している他のシステムで得られる切羽情報、支保工パターン、切羽前方探査情報およびボーリングデータなどの情報を3次元地盤モデルデータに取り込むことで、山岳トンネル工事に関する情報の一元管理を実現する。
またベースとなるPADMSのパフォーマンスにより、現場で汎用されている32ビット PCでも、3次元地盤モデル上で複数の情報が同時閲覧でき、動作遅延することなく画面の切り替え、拡大・縮小、視点変更などが可能となっている。
同ソフトウェアは、中日本高速道路発注の中部横断自動車道森山トンネル工事他1件の工事に導入、運用しており、その有用性を確認している。
今後、両社は3次元データの活用ノウハウを高めるとともに、現場のニーズに適したシステムへの改良を進める。山岳トンネル工事での積極的な活用をはじめ、他の工種へも広く展開を図るなど、建設事業全体におけるCIMの導入を推進していく方針だ。
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