「平時のドローン活用が有事の力に」真の社会実装へ、板橋区とブルーイノベーションが包括連携ドローン(2/2 ページ)

» 2026年09月24日 16時57分 公開
[川本鉄馬BUILT]
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「平時の活用が有事の力になる」防災モデル

 板橋スカイリンクプロジェクトは、日常時と非常時の垣根をなくした「フェーズフリー」の考え方で進める。フェーズフリーとは、平時(日常時)と有事(災害時)というフェーズ(状態)の垣根をなくし、日常的に地域を支えている仕組みや活用が、そのまま非常時の防災力や対応力になるという考え方だ。

 熊田氏は、「災害時に突如ドローンを使おうとしても、現場での迅速かつ安全な運用は極めて難しい。平時からインフラ点検や巡回などで日常的にドローンを活用し、運行実績やデータ、地域との連携体制を十分に積み重ねておくからこそ、豪雨や地震などの有事にも即座に機能させることができる」と解説した。

「平時の活用が、有事の力になる」と力説する熊田氏 「平時の活用が、有事の力になる」と力説する熊田氏

 プロジェクトの基盤となるのが「データ」の蓄積だ。平時からドローンが取得した定量データを蓄積していけば、“デジタルツイン”として板橋区の3D空間を再現できる。3D空間では、有事の最適な飛行ルートや被害予測を事前にシミュレーションすることが可能となる。

 熊田氏は、「ドローンは単なる『飛ぶ機械』ではない。自動でデータを収集して蓄積し、行政や地域の迅速かつ的確な意思決定を支えるインフラだ」と強調する。また、板橋区 防災危機管理課 課長 森康琢氏も、「災害時には、地域防災計画に定められた通り、迅速な情報収集や被害状況把握が第1の目的となる。数々の災害現場で活躍されてきたブルーイノベーションとの連携は心強い。区と共に平時は住民主体の防災訓練やイベントを開催し、情報共有の連携訓練を重ね、最大の防災力強化につなげたい」と抱負を述べた。

 一方、人口集中地区(DID)が多い板橋区では、ドローンを飛ばすハードルが高い。産業振興課 課長 藤原仙昌氏は、「多様な実証を重ねて安全性を証明し、住民理解を醸成することが行政の役割だ。フィールド確保や調整などの『お膳立て』を率先し、安全で有益な(ドローン活用の)モデルケースを確立していきたい」と語った。

左から、板橋区 防災危機管理課 課長 森康琢氏、産業振興課 課長 藤原仙昌氏、ブルーイノベーション 代表取締役 熊田貴之氏 左から、板橋区 防災危機管理課 課長 森康琢氏、産業振興課 課長 藤原仙昌氏、ブルーイノベーション 代表取締役 熊田貴之氏

全国へ広がる「板橋モデル」の展望

 今回の協定は、防災対策と「産業振興/人材育成」が強力に結びついている。板橋区は、2026年に「板橋区産業振興構想2035」を策定し、重点イノベーション分野に「ドローン」を位置付けた。

 坂本氏は、「板橋区には、光学/精密機器、機械/金属加工など高度な技術力を誇る『ものづくり企業』が集積している」とし、今回のプロジェクトを「地域経済の活性化や新規事業の創出に直結させたい」と口にした。

 製造業の高いモノづくり技術は、ドローンの高性能パーツ開発に生かせる。また、建設業や点検事業者はドローンを用いた高度な維持管理サービスの展開、物流業者はラストワンマイルを支える新たな配送サービスへ挑戦しやすくなる。

 ドローンによるラストワンマイル物流について、熊田氏は「医薬品といった運搬難易度の高い物資配送の仕組みを平時から整備し、経済的なシステムとして持続可能にすることが有事の即時対応にもつながる」と説明した。

 さらに熊田氏は、板橋区で培った成果を都市部での「再現可能なモデル(プラットフォーム)」とする展望を示した。全国には、板橋区と同様に過密都市特有の課題やインフラ老朽化、災害リスク、物流の人手不足を抱える自治体が数多く存在する。熊田氏は、「2027年度を節目に具体的な社会実装の成果を出し、『板橋モデル』を全国の自治体や産業界へ水平展開していきたい」と展望を明かした。

板橋区で構築する「板橋モデル」を全国へ展開 板橋区で構築する「板橋モデル」を全国へ展開
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