平山建設が現在、生成AIとBIMを組み合わせて開発を進めているのが「超高速賃貸マンション企画提案システム」だ。
従来、土地オーナーや投資家へ賃貸マンションを提案するには、営業担当者が現地を調査して用途地域や建ぺい率などの法規制を確認。その後、設計担当者が建物のボリュームプランを作成し、概算工事費を算出。事業収支をまとめ、提案資料に仕上げていた。営業担当者が図面を受け取るまでに3週間ほどかかることもあったという。
超高速賃貸マンション企画提案システムは、担当者が土地の住所と敷地図を入力すると、用途地域や建ぺい率、容積率、高さ制限などの法規制を検索し、その情報を基に生成AI「Claude」が平面プランを作成する。人が平面プランを確認した後、MCP(Model Context Protocol)を介して3Dモデリングソフト「Blender」と連携し、建物のボリュームモデルを生成。さらに、自社の施工実績を基に構築したコストモデルを組み合わせ、概算工事費や事業収支を算出。投資家向けの企画提案レポートまで約1時間で完成させる。
システムで算出する概算工事費の精度は現時点で±7%程度。今後は±3%を目標に精度を高める。短時間で提案のたたき台を作成できれば、営業担当者は土地オーナーから相談を受けた早い段階で建物の規模や外観、事業性を具体的に示せる。設計担当者が案を作成する前に複数の可能性を比較し、有望な案へ時間を集中させることも可能になる。
ただし、AIが生成した結果をそのまま採用しているわけではなく、人間が確認する原則は外さない。システムの作業手順でも、AIが作成したプランをいきなり3Dモデルにするのではなく、まず平面の段階で人が確認する。立体モデルを作成した後に設計を修正すると、平面段階の修正に比べて多くの手間がかかるためだ。AIはあくまで情報を集め、検討に必要な材料を短時間でそろえ、選択肢を示すという設計者や営業担当者を支援する役割と位置付けている。
2024年、平山建設の業務改革をけん引してきた「働き方改革委員会」が解散した。「鈴木課長が毎日ニコニコ帰れる日を目指そう」という目標は、「鈴木部長がニコニコ帰れる日」の実現をもって達成し、発展的にその役目を終えたのだ。
平山建設がAIを使いこなせるようになったのは、最新技術をいち早く導入したからだけではない。情報を共有できる環境を整え、現場と本社の役割を組み直し、社員が自ら新しい道具を試せる組織を15年の歳月をかけて地道に築き上げてきたからだ。
DXとは単にデジタル技術を導入することではなく、人がよりよく働けるように仕事を設計し直すこと。その積み重ねが、「鈴木課長がニコニコ帰れる会社」を目指した取り組みを、社員一人一人がAIで仕事を変える現在の姿につなげた。
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