設計から施工までを一元化 AU 2025で明らかになったAutodeskの新CDE「Forma」セミナーレポート

米Autodeskは、テネシー州・ナッシュビルで開催したグローバルカンファレンス「AU 2025」で、建設向けクラウド「Autodesk Construction Cloud(ACC)」の「Forma」への統合を発表し、2026年3月に公式リリースした。AIによる解析や設計の効率化など、次世代プラットフォームの詳細と、グローバルでの建設業界の課題解決策をレポートする。

» 2026年06月02日 20時21分 公開
[坂入太陽BUILT]

 米Autodeskは2025年9月16〜18日(現地時間)、米国テネシー州ナッシュビルでグローバルカンファレンスイベント「Autodesk University 2025(AU 2025)」を開催した。世界中の「Design & Make(デザインと創造)」の先駆者たちによるフラッグシップイベントとなっており、建築・エンジニアリング・建設、製品設計・製造、メディア&エンターテインメントなど、ものづくりの最前線に立つイノベーター約1万2000人超が一堂に集結。次世代を形づくるテクノロジー、トレンド、アイデアを共有した。オンライン視聴者を含む総参加者は3万4000人以上、日本からも350人以上が現地に赴いたという。

 今回のテーマは、「ものづくりの新時代“New Era of Making”」だ。「AI」「データ」「サステナビリティ」を軸に、Autodesk 社長 兼 CEOのアンドリュー・アナグノスト(Andrew Anagnost)氏による基調講演をはじめ、世界中のユーザー企業による事例も発表した。

 Autodeskでは、新たなサービスの軸として、製造業界向け「Fusion」、メディア&エンターテインメント業界向け「Flow」、建設業界向け「Forma」を3大柱として位置付けている。本稿では、AU 2025の日本ユーザー向け説明で、オートデスク 日本地域営業統括技術営業本部 建築・土木テクニカルソリューション部本部長 羽山拓也氏が解説したAECO(Architecture、Engineering、 Construction、Operations)領域の内容に絞って紹介する。

世界中のイノベーター約1万2000人超が集まったカンファレンス「Autodesk 「Autodesk University 2025」 世界中のイノベーター約1万2000人超が集まったカンファレンス「Autodesk 「Autodesk University 2025」 提供:オートデスク

プロセス連携をさらに加速させる「Autodesk Forma」

 羽山氏は、Formaの解説に先立ち、現状の世界が抱えているさまざまな課題について問題提起した。「2050年までに世界人口は100億人に達し、それ伴ってエネルギーの需要も50%増加し、94兆ドルにも及ぶグローバルなインフラ投資が求められる。対応するため、あらゆるデジタル化が加速度的に進んでおり、今後のビジネスのスキルアップやリスキリングは、デジタル前提を共通認識としている」と、建築現場を一元管理するAIやクラウドプラットフォームの重要性を改めて主張した。

建築業界は、デジタル変革によって進化を続けてきた 建築業界は、デジタル変革によって進化を続けてきた 提供:オートデスク

 今回、既存システムから統合し、名称を改めたFormaは、建築の「設計初期フェーズ」に特化したクラウドプラットフォームだ。AIを活用した概念設計から環境解析、BIMソフトウェア「Revit」との高度に連携する。

 前身に当たる「Autodesk Construction Cloud(ACC)」は図面やBIMモデル、ドキュメント、施工スケジュール、品質/安全チェック、予算/コスト情報など、設計段階から施工完了までの各フェーズをシームレスに連携させ、全工程でチームとデータを一元管理する仕組みを提供してきた。

 一方で敷地情報をもとにしたボリュームスタディーの即時作成、日照、風、騒音、エネルギーなどの環境解析の自動実行、複数案の比較や評価の可視化など設計フェーズではプラットフォームがが分散しており、Revitなどを併用せざるを得ない状況だったという。専門ソフトの操作スキルを求められたり、うまく連携できずにデータの再入力や再検討が発生したりと、さまざまな課題を抱えていた。

膨大な設計データをAIに学習させ、迅速な設計支援を実現

 FormaではACCの機能に加え、こうした業務も全てクラウド上に集約。設計初期の検討データがそのまま下流工程と連携し、「検討→解析→比較」のサイクルを高速で回せる点を最大の特徴とする。

 「クラウドベース」「AI活用の前提化」「業務全体への包括」の3つのアプローチで、建築家、エンジニア、施工者、発注者を包括的に取り扱い、業界の端から端までエンドツーエンドでカバーする。

シームレスな連携を可能にした「Autodesk Forma」 シームレスな連携を可能にした「Autodesk Forma」 提供:オートデスク

 さらに、Autodeskがこれまで培ってきた膨大な設計データを活用し、工期短縮やコスト削減、環境性能といった指標を最適化しながら設計する「Outcome-based BIM(アウトカムベースBIM)」も重要なポイントだ。クラウドに蓄積されたデータをAIが学習し、よりスマートな設計を支援する。

 過去の実績や建築プロセスのデータから、現在設計しているビルの想定コストや作業工程、環境への影響などを自動で予測できるため、プロジェクトの初期段階からさまざまな効果を明確に把握できる。「事前に共有しておけば、作業が進んでからの仕様変更や施主との意見の食い違いなどを極限まで減らせる。施主側の満足度向上や建築業界側からの提案力強化にもつながる」(羽山氏)。

 オーストラリアの或る建築設計事務所では、Outcome-based BIMをのAIを用いることで、従来約2日を要していたビル計画時の環境シミュレーションが、2時間で完了したという。事前に膨大な環境シミュレーションを行いAIに学習させておくことで、迅速な作業を可能にした。

「Autodesk Forma」によって強化されるワークフロー 「Autodesk Forma」によって強化されるワークフロー 提供:オートデスク

日本向けサービスも随時提供

 2026年3月には、日本市場向けにもACCをFormaに統合するアナウンスが発表された。現段階では使用言語は英語だが、日本語対応を進めていく他、日本専用のデータセンター設置も予定している。

 日本では2024年7月、ACCの効果的な活用や普及を目的に、清水建設や大和ハウス工業、竹中工務店、日揮ホールディングスをはじめとする大手建設関連会社が「ACCユーザー会」を発足。四半期に一度のペースで定例会を開催し、デジタルコミュニケーションの在り方を議論している他、業界全体が抱える課題解決を目指したコミュニティー活動も行っている。

 Formaの新たな機能としては、施工現場向け「Forma Build Essentials」を提供する。写真や位置情報とともに指摘事項を記録し、Webまたはモバイルアプリ上でデータを共有できる。さらに、RevitやAutoCAD、Civil3Dなどのユーザーも共通データ環境(CDE)に接続できるサービス「Forma Data Management Essentials」もリリース。企画・設計・施工・運用の各工程で、常に最新の共通情報に基づいて業務を進められるようになった。

 今後もAutodeskは、設計・施工プロセスの接続性とインテリジェンスを備えたワークフローを提供し、より一層のデジタル変革をサポートしていく。

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