万博の迎賓館や日本館を最新技術「3DGS」で解剖 日建設計が「東京建築祭2026」で公開3DGS(2/2 ページ)

» 2026年05月21日 09時51分 公開
[石原忍BUILT]
前のページへ 1|2       

設計者にとっても初めてとなる体験

 DDLでは先行して、2025年10月の「生きた建築ミュージアムフェスティバル大阪2025」で3DGSを採用している。万博パビリオンを3Dスキャンして生成した3D空間内を、マウス操作で自由に歩き回れるコンテンツを出展した。

 ただ、戸田氏は「3DGSは3次元で精細に現実を残せるという点では素晴らしいが、それだけであれば動画と違いはないのではないかと考えた。日建設計だからこそのアプローチで、現実では見られない俯瞰(ふかん)の視点で建築物の内側を見ることができれば、まだ誰もやったことのない領域になるかもしれない。仮にPYNT東京のワンフロアをパースペクティブ(遠近法)で見るのではなく、断面を切って拡大縮小できれば、設計者自身にとっても初めての体験になる」と着想し、今展を企画した。

今展の構想 今展の構想 提供:日建設計

 展示物は、PYNT東京が入る日建設計の東京ビル、万博の日本館と迎賓館の3つだ。建築物を選定した理由について戸田氏は、「東京ビルは過去の東京建築祭の来場者からも、中を見たいとの要望が多かった。万博のパビリオンは既に解体済みで今では現地公開もできず、特に迎賓館は各国元首やVIP専用の空間だったため、一般非公開で入館できた人も稀(まれ)。もう見られない建築の姿を3Dで自由に切断して体験することをコンセプトとした」と明かす。

迎賓館の断面。勾配が付いていることやシンプルな屋根構造も可視化されている 迎賓館の断面。勾配が付いていることやシンプルな屋根構造も可視化されている

 また、東京オフィスは当初、大空間の執務室をユニバーサルプランと設定し、使い方は後の人に考えてもらう設計として什器や机の並びをあえて決めていなかった。そのため、3DGSで現況をデータ化すれば、真上から見た今のフロアを図面化でき、過去の設計と今の社員が生み出した生の配置設計の融合も可能になる。

東京オフィスのあえて空白とした当初の図面と今の現況の比較 東京オフィスのあえて空白とした当初の図面と今の現況の比較 提供:日建設計

図面を鍵に、3DGSとリンクさせる直感的な仕掛け

 鑑賞の仕方は、ボードに印刷した平面図を鍵に見立て、大型ディスプレイの下に差し込むと、3DGSで生成した断面のデータが表示される。裏面に貼られたQRコードを隠されたカメラで読み取り、図面と3Dデータの位置を照合して映し出す仕掛けだ。東京ビルに関してはGNSS(測位衛星システム)の電波が取得できない室内のため、竣工後に作成したBIMモデルの上に手動の微調整で重ねて3DGSの位置を合わせている。

平面図を鍵のように差し込むとディスプレイに断面図が表示される 平面図を鍵のように差し込むとディスプレイに断面図が表示される

 こだわったのはディスプレイの向きだ。ビルの垂直断面であれば“縦置き”、水平断面であれば“平置き”と、建築を知らない一般の人が違和感なく直感的に理解できる工夫を凝らした。

東京ビルの垂直断面は縦置きのディスプレイに表示 東京ビルの垂直断面は縦置きのディスプレイに表示

 今後の展開ついて戸田氏は、「3DGSで建築物を3Dデータ化して誰でも見られるようにすると、設計者が次のプロジェクトを構想する際のリファレンスとして役立つ。今回の展示のような形で施主へプレゼンすれば、新たな価値体験の提供にもなり、イメージ共有のツールにもなる。他にも、美術館の展覧会はキュレーター(学芸員)が企画する展示内容は通常1度きりのものだが、1つの文化として残すこともできる」と語った。

 東京建築祭2026は、「建築から、ひとを感じる、まちを知る。」をテーマに掲げる大規模な建築の祭典。3回目の開催となる2026年は渋谷エリアなども加わり、過去最多となる151件の建築作品が参加している。2026年5月17〜25日の会期中は、歴史的な名建築から最新の都市型施設まで、普段は入れない場所の特別公開(原則無料/申込み不要)の他、建築家や建築技術者による専門的なガイドツアー(有料/事前申込制)など多彩なプログラムが繰り広げられる。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

特別協賛PR
スポンサーからのお知らせPR
Pickup ContentsPR
あなたにおすすめの記事PR