日建設計と東大は、地震後の建物の蓄積ダメージを正確に把握できるシステムを共同開発した。仕上げに覆われた柱や梁のひずみの直接測定やダメージの蓄積度から安全性を正確判断し、建物の早期復旧を支援するとともに、安心な継続利用を実現する。
日建設計は2024年2月22日、東京大学大学院 工学系研究科 建築学専攻 鋼構造研究室の伊山潤准教授と共同で、地震後のS造建物の蓄積ダメージを正確に把握する「ダイレクトモニタリング」を共同開発したと発表した。
ダイレクトモニタリングでは、長期にわたって建物を支える柱や梁(はり)が健全かどうかをひずみセンサー計測で直接確認し、建物の損傷状況を素早く正確に判定するとともに、部材に蓄積されたダメージも測定する。大地震で建物に被害が生じた際の早期復旧を支援し、建物の安心な継続利用につなげるレジリエンスサポートサービスとして、実用化、商用化を目指す。
日建設計は2014年、地震時の建物の揺れを計測し即座に被災度を判定する地震時建物被災度判定システム「NSmos(Nikken Sekkei Structural Monitoring System:エヌエスモス)」を開発した。新たに開発したダイレクトモニタリングは、NSmosでは判定対象外だった、仕上げに覆われて目視点検が難しい柱や梁のひずみを直接測定する。
開発手法では、NSmosとダイレクトモニタリングを組み合わせることで、仕上げに覆われた部位の推定を含めて、建物の被災度と部材ダメージをデジタルデータとして検出する。データに基づき、建物所有者に対して修復要否を迅速に発信するとともに、復旧に向けて範囲を限定した効率的な詳細調査を実施。繰り返し発生する地震に対しても、ダメージ蓄積を考慮した安全性の判断が可能だ。
2023年2月には、防災科学技術研究所が実施した「10層鉄骨造オフィス試験体による建物の動的特性評価実験」の余剰空間貸与制度を利用し、伊山潤准教授とともに、ダイレクトモニタリングの検証を実施した。2023年4月からは、日建設計東京オフィスに開設した共創の場「PYNT(ピント)」でも検証を行っている。
日建設計は今後、、設計から地震後の建物機能/復旧までの一連のレジリエンスサポートサービス提供体制を構築し、実用化や商用化を目指す。
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