エヌ・シー・エヌ 特建事業部 大口仁氏は建設地の敷地条件について「幹線道路に接する間口が6メートル、奥行きが27.7メートルと細長く、北側に自動車ディーラーの駐車場、南側に車両進入不可の細い道路が接する特殊な形状だった。アプローチが幹線道路側の狭い間口に限定されるため、計画段階から設計事務所や施工会社とともに、施工手順や搬入計画、使用部材などを協議する必要があった」と説明。隣接するディーラーの駐車場を借用できたことから、隣地に重機を設置する施工計画を策定した。
今回の敷地の一部は都市計画道路の区域内に該当する。当該区域を3階建て、それ以外を5階建てとし、エキスパンションジョイントで分割した。将来の一部除却を想定し、それぞれが自立する構造設計を採用している。
建設地は防火地域に該当し、耐火要件は1階が90分、2〜5階が60分。耐火被覆材として1階には厚さ21ミリの強化石膏ボードを三重張り、2〜5階は二重張りとした。階段については木材に全面を石膏ボードで被覆する手法を避け、鉄骨階段を採用した。
部材構成はコストと入手性の観点から一般流通材を主体としている。応力が大きくなる北側の通りには150幅の部材を採用したが、それ以外は120角ベースで構成した。長さは6メートル以下に抑え、柱を縦にジョイントできるSE構法の金物を活用することで、狭い現場での取り回しと施工性を向上させた。
間取りは敷地形状に合わせた長方形を基本としつつ、3〜5階の共同住宅フロアでは正方形に近い部屋配置とした。耐力壁をバランス良く配置し、設計上の工夫によって十分な採光を確保しながら高い耐震性を確保している。
建設に当たっては地盤対策も課題の1つだった。調査の結果、地下35メートル付近まで支持層が確認されなかったが、上部構造が比較的軽量な木造の特性を考慮し、杭基礎ではなく地盤改良を選択。地下10メートル付近の粘性土層を設計上の支持地盤として評価し、柱状改良とベタ基礎を組み合わせて支持力を確保。土質試験で建設後の沈下リスクが小さいことを確認した。
施工を担う安藤建設は横浜市で1942年に創業し、神奈川県内を中心に公共/民間の新築/改修工事を幅広く手掛けてきた。安藤建設 笠原史隆氏は「ここ数年、当社でも大型木造の施工機会が増加している」と説明。一方で、大型木造建築はS造やRC造を組み合わせたハイブリッド構造が多いことに触れ「当社でも以前から純木造ビル建築を模索してきたが、技術的な問題などから実現には至っていなかった。今回の敷地との出会いとエヌ・シー・エヌとの連携により、事例の少ない純木造5階建てビルへの挑戦が実現した」と振り返る。「木造ビルを珍しい選択肢ではなく、新しいスタンダードにしたい。同業他社と連携しながら建物の木造化を盛り上げていければと考えている。今後は6階、7階、8階建てを実現できるプロジェクトも視野に入れ、中高層の大型木造の推進に協力していく」と決意を述べた。
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