燈は2021年2月、代表取締役社長兼CEO 野呂侑希氏が21歳の在学時に創業。現在は従業員が400人を超え、その約半数がエンジニアだ。これまで、建設業界を中心にデータの蓄積やソリューションを推進してきた。野呂氏は「建設業で知見を深める中で、工場のリニューアルや生産ラインの計画にも関わり、製造DXへも領域を広げてきた。現在はものづくり産業全体をターゲットに据えており、日本の基幹産業全体に貢献していきたい」と展望を語る。
燈では「燈道」と名付けた行動指針を定めている。質実剛健、凡事徹底、爆速、圧倒的当事者意識、一致団結の5つで、野呂氏は「当社は最新技術を扱う一方で、文化としては日本企業が大事にしてきた情熱や志を重んじている」と明かす。
燈のAI開発について野呂氏は「従来データ化されていなかった現場の情報を収集し、取得したデータをデジタルツイン上に再現。デジタル空間上のシミュレーションでAIを訓練したうえで、再び実機へ搭載して現場に戻すサイクルを構築している。このスピードの速さと精度の高さが最大の強みだ」と強調した。
これまでの成果として、100種類以上のAIモジュールを保有。建設業で培ったDXやAI実装の知見を、製造業を含む基幹産業へと横展開する。
さらに野呂氏は「日本の製造現場には、世界に誇れる質の高い匠のデータがある。三菱電機という最良のパートナーを得て、世界への挑戦権を得たとワクワクしている」と述べ、フィジカルAIの領域は日本が競争力を発揮できる分野だとの認識を示した。
三菱電機 専務執行役 CDO 武田聡氏は、「フィジカルAIの実現には自律分散制御が原則になる。現場のOTデータはITデータの10倍から100倍に上り、膨大なデータを全てクラウドに上げるのはコスト面でも制御速度の面でも非現実的だ。現場に近い場所で自律的/分散的に処理しながら学習し続けるAIでなければ、フィジカルAIは実現できない」と語る。
三菱電機は現在、燈と共同で、デジタルツインを活用した工場内物流AIオーケストレーション(統合制御)の実証を進めている。工場内でラインとラインをつなぐ物流は、ライン間のバランス調整などが必要なため自動化が難しい領域だった。AMRと生産ライン、エレベーターを連動させた複数フロアにまたがる物流をデジタル上でシミュレーションし、さまざまな条件下での最適なパターンを導き出した。
武田氏は「従来は現場で実際に動かしながら調整するため非常に時間がかかっていた。燈との協業により、現場での調整をスキップし、シミュレーションだけで最適な答えを導き出すことに成功している」と語った。
今回の提携は、工場の自動化にとどまらず、三菱電機が持つ防衛、宇宙、FA、空調、エネルギーなど幅広い事業領域への展開も見据える。両社は、現場データの取得、デジタルツインによるシミュレーション、実機への再実装を組み合わせながら、基幹産業のAI化を加速させる考えだ。
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