建設資材の高騰や事業費の増大、環境への関心の高まりなどを背景に、公共施設の老朽化対策に大きな変化が生じつつある。新たに建て替えるのではなく、ファシリティマネジメント(FM)の視点から、既存建築物を改修して新たな価値を付与しようとする動きが広がっている。その一例として青森県では、県立高校と庁舎で、新築への建て替えではなく改修を選択し、地域住民に愛されるFM視点での公共施設の再生を実現した。
近年、建設資材の高騰や建設費の増大などを背景に、大規模建設プロジェクトが計画変更を余儀なくされる事例が後を絶たない。環境への関心の高まりも後押しし、公共施設の老朽化対策では、ファシリティマネジメント(FM)の視点から既存建築物を改修して長く使い続ける考えが広まりつつある。
青森県では県庁舎の長寿命化事業をはじめ、既存建築物のFMに力を入れ、先進的な公共施設の改修に取り組んできた。
日本ファシリティマネジメント協会(JFMA)が2025年2月に開催した「第19回 日本ファシリティマネジメント大会(ファシリティマネジメントフォーラム 2025)」に、確認審査機関の建築住宅センターで代表取締役社長を務める駒井裕民氏が登壇。かつて青森県職員としてファシリティマネジメントの導入や推進に長らく携わってきた経験から、青森県でのFM視点に基づく既存建物の長寿命化事例を紹介した。
2026年で20年目を迎える「ファシリティマネジメント フォーラム 2026(第20回 日本ファシリティマネジメント大会)」。今回のテーマは「これからのFMについて語ろう」。オンデマンド配信では会期終了の2026年2月27日まで、70を超える多彩な講演が凝り広げられる(申し込みは右の画像クリックで専用Webサイトから)。
日本の建築物ストックを延べ床面積別にみると、約70%近くが住宅で、法人所有の事務所や店舗は24%、国や地方自治体が所有する非住宅の建築物は7%。耐用年数に限界のある木造や建て替えなどが多い住宅を除き、法人などが所有する非住宅建築物は約20億平方メートルに及ぶ。
このうち、竣工年ごとの延べ床面積では、最も大きな割合を占めるのが1991年から2000年までに竣工した建物で、約4億5000万平方メートル。次に多いのが、竣工後40年に差し掛かっている1981年から1990年までの約3億9000万平方メートルだ。
竣工後50〜60年を経過すると更新時期を迎えるため、あらかじめどの老朽化対策を講じて経営資源として有効活用していくかを準備しておく必要がある。その際、「建築物の一般的な耐用年数をどう考えておくかが大切だ」と駒井氏は指摘する。
一般的に「物理的耐用年数」は、建築躯体などが劣化し、要求される限界性能を下回る年数のことだ。「経済的耐用年数」という考え方もあり、継続使用するための補修や修繕の費用が改築や更新する費用を上回る年数を指す。
物理的耐用年数は、鉄筋コンクリート造の建築物であれば構造体の大規模な補修が必要ないと想定される期間が65年、長期で約100年とされている。内外装や設備を適切に更新すれば、100年以上の運用に耐える建築物もあるはずで、メリット/デメリットを踏まえた判断が求められる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
人気記事トップ10