竹中工務店は、オフィスなどワークプレース設計で、ABW(Activity Based Working)やリモートワークなど多様化する働き方に対応し、施主の要望を的確にくみ取るため、カードを用いたワークショップを実施している。これまでに「ダイキン工業本社」「桃山学院大学あべのキャンパス」などで実績があり、13件が日経ニューオフィス賞を受賞した。
竹中工務店は、オフィスなどのワークプレース(職場空間)計画で多様化するニーズに応えるため、独自開発した顧客の要望を引き出すコンサルティングツール「アクティビティーカード」の活用を拡大させている。
言語化が難しかったワークプレースの使い方や働き方を約100枚のカードにし、潜在的なニーズと設計者が提案する空間の関係性を明確化し、空間の計画に役立てる。2017年の導入以来、オフィスや大学キャンパス、自治体庁舎などのプロジェクトに用いられ、適用実績が100件を超えた。
アクティビティーカードは1枚が“かるた”のサイズ。現在は、オフィス版87シーン、大学キャンパス版84シーン、自治体庁舎版100シーンの3種類で構成。各カードには「わいわいがやがやアイデアを出す」「ひとりで集中する」「気分転換に体を動かす」のように、竹中工務店の知見に基づき言語化したオフィスや大学キャンパスでのアクティビティー(働き方/使い方)と、イメージ写真がプリントされている。
要望や条件を整理する要件整理(プログラミング)では、カードを使ってワークショップを行う。現在の働き方や新たに実現したい働き方、職場空間の使い方について議論し、施主の要望を正確に把握し、計画に反映する。直感的にカードを選ぶ仕組みで、特別な知識や技術を必要とせず、誰でも参加しやすい。
カードは、知的生産性に関係する多様な働き方とレイアウト計画の対応を整理する例として、CASBEEウェルネスオフィスの評価マニュアルにも掲載された。
オフィスを顧客の事業発展のための重要な資産と考え、オフィス構築に必要なプログラミングやコンサルティングの専門部署「ワークプレイスプロデュース本部」を2006年から設置。本部では、米CRSが1969年に開発した要件整理手法「プロブレム・シーキング」を日本向けにカスタマイズし、多数のプロジェクトで適用してきた。
近年は、ABW(Activity Based Working)やリモートワークなどの新しいワークスタイルが普及し、ワークプレイスに求める要件も多様化している。そのため、従来のプログラミング手法を補う新たなツールが必要となり、アクティビティーカードを開発した。
2017年の導入以来、「ダイキン工業本社」「伊予銀行本社ビル新南館」「三菱電機ZEB関連技術実証棟『SUSTIE』」「デサントR&Dセンター(DESCENTE INNOVATION STUDIO COMPLEX)」をはじめとするオフィスに加え、「桃山学院大学あべのキャンパス」、「国分寺市役所 新庁舎」など多数のプロジェクトで適用した。このうち13件で、創意と工夫を凝らしたオフィスを表彰する「日経ニューオフィス賞」を受賞している。施主からは、「働き方から考える機会につながった」「設計者へ想いを伝えやすい」「スピーディな合意形成に役立った」など、肯定的な声が寄せられた。
今後は、顧客の実情や希望に合わせたカードのアレンジ、またはメンテナンスを行う。また、病院や街づくりをはじめ、多様なプロジェクトへの活用も進め、施主に寄り添った環境づくりに生かす。
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