ゼンリンの3D地図データは、建設プロセス全体で幅広く使われているが、中でも活用が進んでいるのは「計画」や「設計」だ。
計画フェーズで多いのが、プレゼンテーション資料への活用だ。「BIMモデルそのものは精緻に作られていても、周囲が“白モデル”ではリアリティーに欠ける。建物の周囲環境も表現することで、施主や関係者にとって納得感のある提案が可能になる」と遠山氏は説明する。
建物モデルにゼンリンの地形データや周辺建物の3D情報を重ねることで、より現実に近い完成イメージを提示できる。こうした工夫が、合意形成やプレゼンの説得力強化につながる。
設計フェーズでは、熱流体解析ソフトへの取り込みによる風や熱の流れのシミュレーション、DXF形式による地形情報など、解析用途での活用が広がっている。初期段階で敷地の高低差や周辺地形を把握する手掛かりとしても重宝されている。
ユーザー企業の声では、プレゼン資料にゼンリンのデータを用いた建設会社からは、「資料のクオリティー向上につながった」との評価が寄せられた。また、「周辺環境に汎用データを活用することで、設計本体に注力することができた」との感想もあったという。
他にも、マンション配置検討時に風の流れのシミュレーションや自治体の新庁舎建設で周辺環境への影響評価など、設計初期段階の意思決定支援としての利用も広がっている。
遠山氏は講演で、国土交通省が主導する日本全国の都市3Dモデル化プロジェクト「PLATEAU(プラトー)」と、ゼンリンの3D地図データとの違いについても整理した。
LOD(詳細度)は、PLATEAUがLOD1〜4を対象としているが、ゼンリンはLOD1と2に絞っている。その上で遠山氏は、対象範囲、更新頻度、道路表現の3点で、ゼンリンのデータに優位性があると主張する。
LOD1の対象範囲では、PLATEAUは132都市に限定しているのに対し、ゼンリンは簡易モデルながら全国をカバー。更新頻度では、PLATEAUは都市整備計画に準拠して不定期更新だが、ゼンリンは年1回の更新。道路表現では、PLATEAUはテクスチャのみの表現だが、ゼンリンはテクスチャ+形状での詳細な道路表現が可能だ。
一方で遠山氏は、PLATEAUの強みとして「航空測量による高精度な高さ情報」を挙げ、「それぞれの特性を踏まえた上で、ゼンリンとPLATEAUのデータを組み合わせて使っているケースもある」と続けた。
ゼンリンは点群の取得代行、点群データの処理、3Dモデル化といった一連のソリューションを展開しているが、その中で点群データ処理を担うのが、2024年4月にゼンリングループに加わったローカスブルーだ。遠山氏は「点群データはノイズが多く、エリア分けなどが煩雑になりがち。そうした処理に強みを持つのが、ローカスブルーのScanX」と紹介し、第2部のローカスブルーへとバトンタッチした。
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