NEBsとEBを合わせた効果額はビル全体で2.4億円/年、そのうちオフィスに入居するテナントへの効果は2.2億円/年、オーナーへの効果は0.2億円/年となりました。なお、テナントへの効果は、一部テナントでの算定結果を他テナントにも適用と調整をしながら、オフィス専有部全体へ拡大推計することにより算定しています。
自社所有ビル向けNEBsには無かった新たな効果として、テナント企業が利用できるワーカーズラウンジや共用の会議室、屋上庭園などに加え、スタートアップ企業のイノベーションを促進する施設など、テナント型オフィスビルならではの多様な用途の施設活用で、各企業のコミュニケーションやイノベーションの促進などのシナジー効果が発現していると算出されました。
他にも、充実したアメニティー施設を共有することで、自社ビルと比較して費用を抑えながらも、健康増進や生産性向上効果を得られるなど、テナント企業のNEBsがもたらされていると推計されました。さらに、企業のブランディングや地域貢献につながるベネフィットがオーナーに発現していると想定されます。
上記算定額に加え、オーナーへの効果のうち「不動産価値の向上」では、売却時における不動産評価額の増大などのさらなる追加が見込まれます。
【ビルオーナー企業/テナント企業に発現するNEBsとEBの効果】 出典:NTTファシリティーズプレスリリース「アーバンネット仙台中央ビル」にて省エネ・脱炭素ビルがもたらすビルオーナー・テナント双方のメリットを算定」NTTファシリティーズでは、東京都港区のグランパークタワー内NTTファシリティーズオフィスで、ワークプレース改修(2025年完成)を実施し、改修による執務者の健康や知的生産性に対する効果を検証するため、NEBs指標による効果の定量化を行いました。
グランパークタワーのワークプレース改修は、オフィスやワークプレースに求められる機能や要件が変化する中、社員の健康増進や知的生産性を向上させながら、「新たな価値を提供する場」としてのワークプレースの在り方を見直し、アクティビティー分析や出社率データに基づき自社オフィスを最適化しました。通常の執務エリアとして使用していた本社内の一部フロアを共創スペースとしたことが特長です。このような取り組みの効果を評価するにあたり、以下の評価項目で各種アンケートや単純作業/知的生産テストを実施し、改修後のワークプレース移転前後の結果を評価しました。
従来のNEBsロジックに、検証結果を加味し、用途別の面積比率に応じた按分や出社率を考慮することで、グランパークタワーのワークプレース改修によるNEBs効果額をより精緻に推計しました。
今後は引き続き評価項目や計測方法の見直し、他建物での検証を踏まえた評価手法を更新し、ワークプレースでのNEBs算定ロジックの精緻化を目指します。
本連載では、ZEBをはじめとする省エネ建築物の副次的効果の評価手法の「NEBs」について解説しました。第1回ではNEBs指標の考え方や評価方法、第2回では実際の事務所や庁舎でのNEBs効果の発現状況や評価事例を紹介しました。
最終回となる本稿では、テナント型オフィスビルの省エネ改修においてビルオーナー/テナント企業のそれぞれに発現する効果を明らかにすべく、双方にもたらされるNEBs効果の考え方やロジックに触れました。また、実物件での算定事例を交え、テナント型オフィスビルやワークプレースにNEBsを活用した具体的な算定イメージを説明しました。
NTTファシリティーズは今後も引き続き、テナントやオーナー双方への価値算定ロジックの精度向上とともに、他用途の建物へのNEBsロジックの拡張を行うことで、省エネ建築物の普及拡大や環境配慮施策への投資判断を後押しします。こうした取り組みを通じ、ZEBをはじめとする省エネ建築物の採用促進を通じたカーボンニュートラルの貢献はもちろん、従業員のウェルビーイングの向上、Scope3のCO2排出量削減にも貢献することを目指し、幅広いステークホルダーと連携して、地域社会全体での脱炭素化を推進していきます。
ダイダンと八洲建設のZEB化ビルで分かった副次的効果 「NEBs」評価の実践例
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