本連載は、ZEBをはじめとする省エネ建築物の副次的効果の評価手法「NEBs(Non-Energy Benefits)」について紹介しています。第3回では、テナント型オフィスビルやワークプレースでのNEBs効果の考え方や評価事例について、アーバンネット仙台中央ビルとグランパークタワーの実例を参考に解説します。
既報では、省エネ建築物の新築/改修による効果のうち、エネルギーや光熱費の削減以外の効果を評価するNEBsについて、自社所有のオフィスビルを対象に「健康増進」「知的生産性の向上」など12項目とその定量化ロジックを紹介しました。
しかし、自社所有ビルを対象とした評価指標では、日本で多くを占めるテナント型オフィスビルの効果を適切に定量化することが難しく、さらに建物の開発や運用者(ビルオーナー)と使用者(テナント)で、費用負担者と受益者が異なる点も、脱炭素化を困難にさせています。
こうした課題に対応するため、NTTファシリティーズとデロイト トーマツは、既存の12指標をベースに、テナント型オフィスビルにおけるベネフィットをオーナー企業・テナント企業それぞれの視点から整理し、その定量化ロジックを作成しています。効果を定量化して、両者が同じ目線で投資判断することが可能となり、省エネ建築物の新築/改修の投資判断が後押しされます。
アーバンネット仙台中央ビルでのNEBs評価
NTTアーバンソリューションズグループで連携し、宮城県仙台市のアーバンネット仙台中央ビルで“テナント型オフィスビル版”のNEBsロジックを活用し、新築省エネ建築物の総合的な定量評価を行いました。稼働するテナント型オフィスビルでの算定は、アーバンネット仙台中央ビルが第1号案件になります。
NEBs:健康増進、知的生産性向上やBCPなどの副次的効果
ビル入居に伴い、新しい働き方に対応したワークプレースの構築、温熱空気環境の改善などにより、「健康増進」として利用者は精神的/身体的な健康によるパフォーマンスの維持向上、また「知的生産性向上」として集中力や作業効率の向上が見込まれます。評価算定の結果、ビル全体で副次的効果(NEBs)は1.7億円/年となりました。
EB:省エネ建築物の光熱費削減の直接効果
アーバンネット仙台中央ビルでは、環境配慮技術の導入で「CASBEE(建築確認総合性能評価)Sランク」や「ZEB Ready認証」を取得しています。また、共用部へのAI空調の導入や再生可能エネルギーの調達など、環境負荷低減の取り組みを積極的に実施しています。そのため、ビル全体の光熱費削減効果(EB)は0.7億円/年と算定されました。
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