道路表面の沈下を走行車両から計測する技術も進歩しています。本来道路の維持管理に役立てるための計測ですが、陥没予知に貢献する情報が得られる可能性があります。
文献5では、下図左のような道路のポットホールを予知することを目的に、光切断法を用いて下図右のように路面形状データの推移を計測しています。計測結果にニューラルネットワークを適用することで、ポットホールの発生リスクを評価しています※5。
路面性状調査の結果を利用した機械学習で、下図のようにドライブレコーダーで得られる画像から、約10ミリ以上のわだち掘れ箇所を抽出している研究が報告されています※6。このようにドライブレコーダー画像からも沈下を検知できる可能性があることが分かります。
文献7では、走行する車両上で計測された加速度に、連載10回でも触れた時系列分析に強い「LSTM(Long Short Term Memory)」を適用して損傷を判定しています※7,8。検出された損傷区間の道路の状態の例が下図です。
このように画像や加速度など多様なデータを利用して、道路の表面状態や沈下を監視する技術が開発されています。
※8 「自然災害を未然に防ぐAI研究 降雨量や斜面崩壊を“LSTM”で予測【土木×AI第10回】」BUILT
下図は水道の例ですが、AR技術によって道路表面上から地下の状態を可視化している例です※9。地表の道路状態と見えない地下の管路や空洞の情報を重ねて見ることができれば、下水管と地表で発生している損傷や沈下などの位置関係が判明し、陥没の予知に向けて有用な知見が得られます。このような重畳や分析の基盤となるデジタルツイン技術の発展も、インフラの予防保全では重要となります。
老朽化した下水道などを起因とする道路陥没事故の防止で、AIの活用場面としては、まず下水管自体の点検や地下の空洞検知、地表の沈下の計測など、点検や計測の高度化が考えられます。また、地下の状態を含めて、現実空間に重ね合わせて可視化するデジタルツイン技術も有効です。さらに、管路の構造特性や交通量など多様なデータから陥没を予測する研究も進められており※10、今後ここで取り上げたような各種データを加えて拡充して分析していくことで、より高い精度と信頼性で予測が実現すると期待されています。
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