SABOT-3に使用するのは、東洋製罐グループ3社(東洋製罐、東洋エアゾール工業、鋼鈑商事)の新事業「FaST」が提供する専用スプレー缶。内溶液の種類はマーキング剤、黒錆転換剤、コンクリート表面含浸剤、鳥忌避剤、タッチアップ塗料、シリコンコーティング塗料など多彩だ。
スプレー缶の構造にも、包む技術を強みとするメーカーの工夫が詰まっている。アルミ製の缶胴の内部は、液体を入れたパウチを宙吊(つ)りに保持する「Bag-On-Valve(BOV)」構造としている。落下などの衝撃で、缶が破損しても液体が漏れ出ることはない。パウチとすることで、内容液の波打ちが抑えられ、飛行の安定性にも寄与する。
缶胴とパウチとの間には、非可燃性ガスの圧縮窒素ガスを充てんし、スプレー缶のバルブが開くと、窒素ガスの圧力で内溶液が噴射される。液化ガスを用いる通常のスプレー缶のような霧状ではなく、直線状の噴射のため、風の影響を受けづらく、最大5メートルの直射距離と高精度なピンポイント噴射を誇る。
スプレー缶の容量は全て150ml(ミリリットル)。広範囲に吹き付けたい際は、オプションにはなるが追加装置の「増槽(ぞうそう)」を用意している。SABOT-3と連結すれば、並列で最大5缶(750ml)まで搭載可能で、ドローンのランディングギアにクランプで固定できるので取り付けも簡単だ。
ブースでは、「SABOT-3」と連携可能な伸縮式アーム装置「NYOI(ニョイ)」も参考出品した。
NYOIは、SABOTにケーブル接続するだけで使え、ドローンをホバリングさせたまま対象物へ直接接触して溶剤を塗布できる。本体重量は620グラムながら、最大ストローク長は1500ミリ。「高粘度の塗料など、噴霧では扱いづらい液体にも対応できる点が大きな特長」とブース担当者は語る。「噴霧タイプは、どうしても飛散や溶剤ロスが避けられず、住宅が近い場所などでは使用をためらうケースもある。NYOIのように接触塗布が可能になれば、そうした課題を解決できる」と付け加えた。
現在は、ハケやローラー、スポンジ、アーム機構など、多様な用途に対応するアタッチメントや先端の可動機構の開発も進めている。将来は、自律飛行による塗布作業の自動化も視野に入れているという。
高所作業の負担を減らし、作業現場の安全と効率を両立させる。東洋製罐のドローン用スプレー装置SABOT-3は、まさに働くドローンの実用フェーズに応える製品となり得る。用途に応じてスプレーか接触かを選択できる柔軟性も備え、これからのドローン活用に新たな選択肢をもたらしている。
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