“サウナと水風呂”で次の100年を拓く 前田建設 ICI総合センターの意義(前編)建設業の未来を創る技術拠点(1)(2/5 ページ)

» 2025年03月31日 15時00分 公開
[黒岩裕子BUILT]

日本初「LEED V4 BD+C NC」でプラチナ認証取得

 ICIラボの特徴の1つが、その高い環境性能にある。エクスチェンジ棟は、地域の地下水や自然エネルギーをランドスケープや建築デザイン、設備技術に最大限に利用。一般的なオフィスビルと比較して一次エネルギー消費量を77%削減すると共に、太陽光発電由来の電力の利用で年間一次消費エネルギー収支を実質ゼロとしている。

 2018年3月には建築物省エネルギー性能表示制度(BELS)で5段階評価の最高ランクと『ZEB』認証を取得。2019年3月には国際的な建築環境性能評価システム「LEED V4 BD+C New Construction」で、国内で初めて最高評価のプラチナ認証を獲得した。

南側の壁面には太陽光パネルを設置。水景の反射も利用する 南側の壁面には太陽光パネルを設置。水景の反射も利用する

 建物には、「ZEBと知的生産性向上」を両立するための多様な環境技術が取り入れられている。太陽光パネルを屋根だけではなく南壁面にも搭載し、水景の反射も発電に利用。また、特定のエリアや期間に多く吹く「卓越風」を効率的に取り込み、春や秋の中間期には自然換気を促進する。執務室と階段室をつなぐ開口部を自動で開閉して暖かい空気を屋上へと排出し、電力の消費量を抑えながら快適な室内環境を維持する。

 3階では、アンビエント(室内全体)空調に「天井放射空調」を採用。放射パネルの内側に埋め込んだ配管に熱交換機を経由した地下水を流し、輻射熱で室内の温度を調整する。夏場などアンビエント空調だけでは暑さを感じる場合、ファン付きの小型床吹出口(床下有効250ミリ)をパーソナル空調として利用できる。スイッチを足で3秒程度押すと床下から風が吹き出し、風量も切り替えられる。OAフロアのアップコンセントの開口を使うため、席替えやレイアウト変更にも柔軟に対応可能だ。

 2階には、熱伝導率の高い「テフロン膜」を使った膜天井を導入。膜の内側に空調機を設置することで放射効果が得られる。

ALTALTALT 放射パネル内側の配管に地下水を流す(左)、デッキプレート利用スラブに冷温水配管を流したアタッチメント式の放射空調パネルを装着(中央)、小型床吹出口(右)

 また、建物の外側と内側にそれぞれブラインドを設置し、季節ごとに切り替えて利用する。冬季には内ブラインドが降りて熱を取り込み、夏季は外ブラインドで熱を遮って光だけを取り入れる。屋外のブラインドは安全のため風速16メートルを超えると自動的に格納される。

純木造のリフレッシュスペース「ネスト棟」

 エクスチェンジ棟の西側に位置するネスト棟は、前田建設が初めて設計・施工を手掛けた純木造建築のリフレッシュスペース。トラス梁(ばり)構造を採用し、無柱の開放的な大空間を実現した。

ゲストスペース ネスト棟 ゲストスペース

 建物の中央にはカフェコーナーを配置し、周辺にテーブルやソファを配置して雑談を誘発する。ソロワークスペースは、周囲の様子が見える開放的なエリアから、集中できるクローズタイプのブースまで用意。ガラスであたためる足湯や仮眠スペース、ランニングマシンなど、気分転換できる設備をそろえた。

ALTALTALT さまざまな種類のソロワークスペースを展開(左、中央)、人工芝の上に並んだハンモックやクッションで気分転換できる

ICI LAB

ネスト棟

構造:木造

規模:地上1階

延べ床面積:644平方メートル

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