林業の倒木や草の除去作業の自動化を目指す、東京電機大学 岩瀬将美氏らのコンソーシアムは、福島県いわき市の最大50度の傾斜地でイタリアのMDB製ラジコンとウインチアシスト機を組み合わせて実証を行った。
東京電機大学 未来科学部 ロボット・メカトロニクス学科 教授 岩瀬将美氏を代表者とする「下刈機械自動化コンソーシアム(i-SWM)」は2025年1月14日、福島県いわき市の岩石工場で、イタリアのMDB製ラジコン地ごしらえ機「LV800 PRO」とウインチアシストを組み合わせた実証を行った。
地ごしらえは林業で苗木を植える植林前に、雑草や灌木(かんぼく)を取り除く整地作業のこと。
実証は、福島国際研究教育機構(F-REI)の委託事業の一環で、日本の林業で急傾斜地での機械化の可能性を大きく切り開く画期的な成果となったという。コンソーシアムの構成者は、東日本計算センター、ギガソーラー、ビスペル、遠野興産、エム・シー・エフ、福島県ハイテクプラザ、住友林業。
日本の林業では、斜面が30度を超える急傾斜地が多く存在する。こうした場所では人力や小規模な機械による作業が中心で、作業効率や安全性の面で課題を抱えていた。特に急斜面での重機運用は、エンジンの冷却機能低下や滑落リスクの高さなどの理由に難しく、多くの林業従事者が安全性と効率向上の両立を望んでいた。
そこで「福島国際研究教育機構(F-REI)の委託事業として、下刈機械自動化コンソーシアム(i-SWM)のメンバー各社が協力し、最大傾斜角約50度となる急斜面でラジコン地拵え機LV800 PROのウインチアシスト運用を実証した。LV800 PROは急傾斜地に対応し、最大傾斜60度を誇るが、現実的に地面で滑るための実作業傾斜は35度前後となっている。そのため、日本キャタピラーと住友林業、サナースが共同開発したウインチアシスト型林業作業機械をつなげることで、安全かつ効率的に急傾斜地での作業が可能になるのではと今回のテストに至った。
ウインチアシストは、LV800 PROが引っ張ると自動でワイヤを送り出し、逆にたるませると自動で巻き取る仕組み。実証の結果、45〜50度の傾斜でもエンジントラブルや油圧トラブルも起きなかった。なお、急斜面でエンジンが動く技術は特許技術となっている。
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