米国空調市場の常識を破る パナソニック 空質空調社がOASYSで目指すものCES 2025(1/2 ページ)

パナソニック 空質空調社は2025年1月7日(米国現地時間)、米国市場向けの新しい全館空調システム「OASYS」を発売した。同システムの特徴と狙いについて、Panasonic Eco Systems North America(PESNA)社長の加茂直樹氏に、ラスベガスで開催した最先端テクノロジーの展示会「CES 2025」の会場で話を聞いた。

» 2025年01月29日 07時00分 公開
[三島一孝BUILT]

20〜30年進化していない米国空調事情

 パナソニック 空質空調社が新たに発売した「OASYS(オアシス)」は、ルームエアコン、熱交換気ユニット、DCモーター換気扇を用いた搬送ファンで構成された住宅用の全館空調システムだ。

OASYSについて説明するPESNA 社長の加茂直樹氏 OASYSについて説明するPESNA 社長の加茂直樹氏 筆者撮影

 米国ではセントラル方式の全館空調が一般的となっているが、温度むらや騒音、結露などでメンテナンスコストが高くなる課題があった。OASYSは一般的な家庭用製品を組み合わせることでコストを低減する一方、部屋ごとに搬送ファンの送風を細かく制御し、従来の課題を解決できる点が特徴だ。コスト面のメリットだけでなく、最適な空調制御により、省エネにもつながる。

 パナソニック 空質空調社とパナソニック エレクトリックワークス社の米国法人Panasonic Eco Systems North America(PESNA)社長の加茂直樹氏は「米国の全館空調は、温度むらが非常に大きく、3階が暑く1階が寒いというような状況が各家庭で生まれている。米国の多くの人が不満に思っているにもかかわらず、住宅空調は20年〜30年進化していない。そこを革新する製品だと考えている」と力を込める。

OASYSの全館空調のイメージ OASYSの全館空調のイメージ 出典:パナソニックグループ プレスリリース

ルームエアコンで冷風や温風を作る

 米国の空調は、暖房機器はガス式、冷房機器は電気式が一般的だったが、現在ではいずれも電気への移行が進んでおり、冷暖房機能両方を備えた高効率なヒートポンプやインバータ式空調のニーズが高まっている。ただ、セントラル方式の全館空調は、家中に張ったダクトを通じて1台の大きな搬送ファンから各部屋に冷温風を送風するため、高出力のファンが必要となる。騒音の問題がある他、故障も多く、さらに故障してしまえば家全ての空調が使えなくなることが問題となっていた。

 OASYSは、セントラル空調と同様、空調用の部屋で冷風や温風を作ることは同じだが、それを静音性の高い複数のルームエアコンで行う。そのため、騒音を抑えられる他、ルームエアコンの機器そのものは手軽に手に入り、メンテナンスの手間やコストも抑えることができ、省エネ性も優れている。

 「省エネ性能だけを比較すると日本と同様、各部屋にルームエアコンを設置する方式が有効だが、米国ではセントラル空調方式が普及しているため、家屋も施工業者もルームエアコンに対応していない。そのため、ルームエアコンの良さとセントラル空調の特徴を組み合わせたシステムを考え出した」と加茂氏は説明する。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.