大成建設は、今までになかったデザインや施工の効率化を可能にする手段として、建設用3Dプリンティングの技術開発に注力している。従来のガントリー型3Dプリンタを大幅に刷新した最新の移動式3Dプリンタは、これまで課題だった3Dプリント範囲の拡大や鉄筋かぶりの最適化などを実現し、建設用3Dプリンティングを次のステージに押し上げるデジタルファブリケーション技術として注目を集めている。
大成建設は、「生産プロセスのDX」を掲げ、建設用3Dプリンティングの実現に向けて技術開発に取り組んできた。最新の移動式3Dプリンタは、大型で複雑な曲面形状を持つ構造体やRC壁、ラーメン高架橋といった構造物を現場で直接プリントする「オンサイト3Dプリンティング施工」を実用化するべく開発した。
プリンタの特徴としては、マテリアルを吐出するノズルを動かすロボットアーム全体をレールに載せ、水平方向の移動に対応した点にある。これにより、ガントリー内またはアームが届く範囲内でしかプリントできなかった従来の施工範囲が大幅に拡大した。吐出ポイントに対しても、ノズルを傾けてのアプローチが可能になり、最適な鉄筋かぶりも実現する。
神奈川県横浜市戸塚区にある大成建設 技術センターの担当者に、新型3Dプリンタの開発意図と要素技術を聞いた。
移動式3Dプリンタは、2018年に研究がスタートした建設用3Dプリンティング技術の「T-3DP(Taisei-3D Printing)」と、7軸自由度の多関節ロボットを連携させることで構築した。
大型の造形物を3Dプリンタで作るには、広範囲のノズル移動が不可欠。複雑な形状を作るにはノズルの移動だけでなく、ノズルから吐出する材料の量にも精緻な制御が求められる。大型造形物を3Dプリンタで作るには、材料の吐出量制御を含むT-3DPと多関節ロボット制御の2つのコア技術を融合させなければならなかった。
特に、ロボットアームそのものを水平移動させながらの3Dプリンティングでは、その制御方法がポイントになる。そのため、大成建設では独自に制御プログラムを組み、T-3DPの技術に採り入れている。
意外なのは、3Dプリンタの多関節ロボット(ロボットアーム)が一般的な製品なことだ。大成建設 技術センター 社会基盤技術研究部 材工研究室 コンクリートDXチーム 主任 村田哲氏は、「ロボットアームそのものは国内メーカーの製造業などで使われている汎用品だ」と明かす。
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